新宿区議会 > 2017-11-29 >
11月29日-13号

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  1. 新宿区議会 2017-11-29
    11月29日-13号


    取得元: 新宿区議会公式サイト
    最終取得日: 2021-08-13
    平成29年 11月 定例会(第4回)        平成29年第4回定例会会議録(第1日)第13号平成29年11月29日(水曜日)出席議員(37名)   1番   豊島あつし      2番   木もとひろゆき   3番   三沢ひで子      4番   井下田栄一   5番   小野裕次郎      6番   三雲崇正   7番   佐藤佳一       8番   川村のりあき   9番   北島としあき    10番   野もとあきとし  11番   池田だいすけ    12番   桑原羊平  13番   平間しのぶ     15番   渡辺清人  16番   鈴木ひろみ     17番   久保広介  18番   志田雄一郎     19番   あざみ民栄  20番   阿部早苗      21番   中村しんいち  22番   有馬としろう    23番   下村治生  24番   おぐら利彦     25番   佐原たけし  26番   ひやま真一     27番   吉住はるお  28番   えのき秀隆     29番   のづケン  30番   ふじ川たかし    31番   近藤なつ子  32番   沢田あゆみ     33番   赤羽つや子  34番   宮坂俊文      35番   伊藤陽平  36番   かわの達男     37番   田中のりひで  38番   雨宮武彦---------------------------------------欠席議員(なし)---------------------------------------説明のため出席した者の職氏名  区長       吉住健一    副区長      寺田好孝  副区長      鈴木昭利    総合政策部長   平井光雄  総務部長     針谷弘志    地域振興部長   加賀美秋彦  文化観光産業           村上道明    福祉部長     中澤良行  部長  子ども家庭           橋本 隆    健康部長     髙橋郁美  部長  みどり土木           田中孝光    環境清掃部長   野田 勉  部長  都市計画部長   新井建也    会計管理者    赤堀充男  企画政策課長   菅野秀昭    財政課長     大柳雄志                   教育委員会  総務課長     高木信之             酒井敏男                   教育長  教育委員会            選挙管理           山田秀之    委員会      木城正雄  事務局次長            事務局長  常勤監査委員   濵田幸二    監査事務局長   北村仁英---------------------------------------職務のため出席した議会事務局職員  局長       小池勇士    次長       下杉正樹  議事係長     濵野智子    議事主査     佐藤公彦  議事主査     唐澤一彰    議事係主査    榎本直子  議事係主査    仙崎雄介    書記       岡田栄子  書記       笠原鉄平---------------------------------------  速記士      土田有美---------------------------------------11月29日    議事日程 日程第1 代表質問--------------------------------------- △開会・開議 午前9時59分 ○議長(佐原たけし) ただいまから、平成29年第4回新宿区議会定例会を開会します。 本日の会議を開きます。 会議録署名議員は、  19番 あざみ民栄議員  20番 阿部早苗議員 を指名します。--------------------------------------- ○議長(佐原たけし) 次に、事務局次長に諸般の報告をさせます。 ◎議会事務局次長(下杉正樹) 区長から、 1、平成29年第4回新宿区議会定例会の招集について 2、第61号議案など25件の議案送付について 監査委員から、 1、新宿区職員措置請求について(通知) 2、新宿区職員措置請求について(通知) 3、平成29年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(9月分・10月分)---------------------------------------                           29新総総総第2193号                           平成29年11月17日 新宿区議会議長  佐原たけし様                            新宿区長  吉住健一        平成29年第4回新宿区議会定例会の招集について このことについて、本日裏面写しのとおり告示したので通知します。 (裏面)(写) 新宿区告示第803号 平成29年第4回新宿区議会定例会を11月29日に招集する。  平成29年11月17日                            新宿区長  吉住健一---------------------------------------                           29新総総総第2294号                           平成29年11月20日 新宿区議会議長  佐原たけし様                            新宿区長  吉住健一               議案の送付について 平成29年第4回区議会定例会に提出のため、下記議案を送付いたします。                   記 1 第61号議案 新宿区総合計画の基本的な事項について 2 第62号議案 平成29年度新宿区一般会計補正予算(第5号) 3 第63号議案 平成29年度新宿区介護保険特別会計補正予算(第3号) 4 第64号議案 新宿区職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例 5 第65号議案 新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例 6 第66号議案 新宿区立幼稚園条例の一部を改正する条例 7 第67号議案 町の区域及び名称の変更について 8 第68号議案 公の施設の指定管理者の指定について 9 第69号議案 公の施設の指定管理者の指定について 10 第70号議案 公の施設の指定管理者の指定について 11 第71号議案 公の施設の指定管理者の指定について 12 第72号議案 公の施設の指定管理者の指定について 13 第73号議案 公の施設の指定管理者の指定について 14 第74号議案 公の施設の指定管理者の指定について 15 第75号議案 公の施設の指定管理者の指定について 16 第76号議案 公の施設の指定管理者の指定について 17 第77号議案 公の施設の指定管理者の指定について 18 第78号議案 公の施設の指定管理者の指定について 19 第79号議案 公の施設の指定管理者の指定について 20 第80号議案 公の施設の指定管理者の指定について 21 第81号議案 公の施設の指定管理者の指定について 22 第82号議案 公の施設の指定管理者の指定について 23 第83号議案 公の施設の指定管理者の指定について 24 第84号議案 公の施設の指定管理者の指定について 25 第85号議案 公の施設の指定管理者の指定について---------------------------------------                             29新監査第357号                            平成29年10月17日 新宿区議会議長  佐原たけし様                        新宿区監査委員  岩田一喜                           同     濵田幸二                           同     白井裕子                           同     有馬としろう           新宿区職員措置請求について(通知) 平成29年9月29日付けで別紙(写)に基づく新宿区職員措置請求住民監査請求)がありましたが、下記の理由により却下することに決定したので通知します。     〔以下は省略〕---------------------------------------                             29新監査第368号                            平成29年10月25日 新宿区議会議長  佐原たけし様                        新宿区監査委員  岩田一喜                           同     濵田幸二                           同     白井裕子                           同     有馬としろう           新宿区職員措置請求について(通知) 平成29年10月25日付けで別紙(写)に基づく新宿区職員措置請求住民監査請求)がありましたので、地方自治法等の一部を改正する法律(平成29年法律第54号)附則第2条第3項の規定に基づき通知します。     〔別紙は省略〕---------------------------------------                             29新監査第367号                            平成29年10月24日 新宿区議会議長  佐原たけし様                        新宿区監査委員  岩田一喜                           同     濵田幸二                           同     白井裕子                           同     有馬としろう    平成29年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(9月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕---------------------------------------                             29新監査第415号                            平成29年11月24日 新宿区議会議長  佐原たけし様                        新宿区監査委員  岩田一喜                           同     濵田幸二                           同     白井裕子                           同     有馬としろう    平成29年度新宿区歳入歳出例月出納検査の結果について(10月分) このことについて、地方自治法第235条の2第3項の規定に基づき、下記のとおり報告します。     〔巻末諸報告の部参照〕--------------------------------------- ○議長(佐原たけし) 会期についてお諮りします。 本定例会の会期は、本日から12月11日までの13日間にしたいと思います。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕 ○議長(佐原たけし) 異議なしと認めます。 会期は、本日から13日間と決定しました。--------------------------------------- ○議長(佐原たけし) これから本日の日程に入ります。 日程第1、代表質問を行います。 質問の通告を受けましたので、順に質問を許します。 最初に、27番吉住はるお議員。     〔27番 吉住はるお議員登壇、拍手〕 ◆27番(吉住はるお) 自由民主党・無所属クラブの吉住はるおです。平成29年第4回定例会に当たり、会派を代表して区長並びに教育委員会に質問いたします。どうか誠意ある御答弁をお願いいたします。 最初に、新宿区総合計画(案)と組織等のあり方について伺います。 新宿区総合計画(案)の「基本政策Ⅴ 好感度1番の区役所」の個別施策には、「行政サービスの向上」があります。そこでは、どちらかというと、サービス内容の充実といった面が色濃く書き込まれています。しかし、区民から見た場合には、同じサービスであっても、そのサービスの提供体制の面からのアプローチ、すなわち組織のあり方も重要なのではないでしょうか。 今後ますます複雑・多様化する行政需要に対して、適切で安定した区民サービスを提供するためには、効率的な組織運営が不可欠となります。そのためには、職員一人ひとりの能力向上と人材の有効活用を図るとともに、区民にとって効率的で、しかもわかりやすい窓口体制などの組織づくりも求められています。これらの職員の人づくりと窓口体制などの2つがあわさって、より良いサービスの提供が可能となる組織力の強化が図られるのだと考えます。 より良いサービスを提供する組織のあり方などについて、以下、幾つか伺ってまいります。 そこで、まず伺いますのは、今後の10年間を計画期間とした新宿区総合計画(案)を策定するに当たって、区民サービスの提供体制などの組織のあり方については、どのような議論が交わされてきたのでしょうか。議論の幾つかを御紹介いただければと思います。 次に、少し具体的に今後の窓口体制などについて伺います。 最近では、普通に使われるようになった言葉に「ダブルケア」という言葉があります。多くの場合は、育児と介護の同時進行の状況をあらわしています。このことが問題であるという認識の用語として使われ出したのが、介護保険制度が始まって間もなくとのことですから、10年にもなりますし、今日では、さらに要介護の末に障害を伴うことになったりと、育児と介護、介護と障害が並列的となることも多くあります。あわせて、障害のある子と要介護の親の世帯への支援も課題となっている状況です。 しかし、これまで多くの場合において、これらの問題に対応する組織が「子育て部門」と「高齢者部門」などという、それぞれが縦割りの組織で対応され、その具体的なサービスの提供などにあっても、個々の根拠法に基づき、別々の事業者や施設などにより提供されてきたのが実情だと思います。 このように、対象者ごとに「縦割り」で整備された現行の公的な支援制度のもとでは、対応が困難なケースも浮き彫りとなっているのが現状です。確かに、これまでは育児と介護の同時進行というケースなどは、周囲を見ても余り見かける状況ではありませんでした。しかし、少子高齢化が急速に進む中、2025年問題を挟んでこれからの10年では、私たちの身の回りにはいろいろな形のダブルケアなどの問題が一般化するのではないでしょうか。 福祉の対象者における高齢かつ障害者、児童かつ障害者、高齢者かつ生活困窮者など複数の分野の施策で対応しなければならないというケースが増え、多くの区民が複数の窓口を頻繁に訪れなければならなくなる時代が来るように思われますが、区ではどのようにお考えでしょうか、区長の御所見をお聞かせください。 次に、新宿区では、平成11年度まで福祉部に「総合相談室」という組織があったとのことです。その組織がどのような考え方のもとに設置されたのか、私には定かにはわからないところですが、いわゆる「窓口のたらい回し」を避けるための先進的な取り組みとしての相談窓口の総合化・ワンストップ化を目指したものであるようにも受けとめられます。 当時の福祉部では、どのような位置づけにあり、どのような理由から今では存在していないのでしょうか伺います。 次に、同様な考え方のもとに、「高齢者食事サービス」と「子ども食堂」の一元化について伺いたいと思います。 このことは、あくまでも一例ですが、要は今後の施策の運営に当たっては、多くの事業において「横串を刺す」という視点だけではなく、区民目線で分野横断的な発想により、窓口や事業の統合などの必要も出てくるのではないかと考えます。 その一つとして、この「高齢者食事サービス」と「子ども食堂」の一元化の検討があるように思います。 この2つの事業は、「適切な食事の提供」と「孤食」という共通の課題解決を主な目的とした事業です。私は、このような事業の一元化を図っていくことは、事業の効率化だけではなく相乗効果をもたらすことも考えられ、今日的な課題解決方法の一つだと考えますが、区長の御所見を伺います。 次に、組織の統合などについてです。 組織は、仕事を効率的かつ的確に処理するために運営されるものですが、共管的な事項に係る部分については、お互いに踏み出しにくい、遠慮的な意識も発生して、ともすれば「組織の狭間」「制度の狭間」という日本の行政制度特有の問題を招くのではないかと考えます。 区では、組織間や業務にこのような「狭間」をつくらないために、どのように取り組まれているのでしょうか、区長に伺います。 次に、総合計画における住まいの扱いについては、その多くの部分が現在、パブリック・コメント実施中の住宅マスタープラン(素案)に委ねられる形となっているところから、住宅マスタープラン(素案)の内容に沿って、近居・同居などの住宅施策のあり方について伺います。 私たち会派では、平成28年第3回定例会の代表質問で、三世代同居や近居を促進する支援の仕組みづくりの構築を提案しています。その際の区長答弁は、「親世帯と子世帯が支え合う近居の支援などについては、広く子育て支援や高齢者の生きがいづくりにもつながる総合的な視点を持って検討していく」でした。 私たちは、この答弁を受け、このたびの次期住宅マスタープランに期待を寄せるとともに、総合計画、実行計画にどのように具現化されるのかを関心を持ってきたところです。 本年7月20日付で住宅まちづくり審議会答申を受けた「新宿区住宅マスタープラン(素案)」にも、少子高齢化の進行に伴う住生活への影響として「高齢者の居住の安定」と「子育て世帯への対応」が取り上げられています。 具体的には、「近居・同居を容易にする施策の促進」として、「子世帯とその親世帯が近くに住んで、相互に支えあう近居及び同居のための住み替えを支援します」とあり、また「子育て世帯に対する居住継続の支援」では、「子の出生や成長に伴い、より広く良好な環境の住宅への住み替えを要する子育て世帯が区内に住み続けられるよう、居住環境改善のため区内に住み替える際の経済的支援策について検討します」とあります。 これらの内容は、私たち会派のこれまでの主張とほぼ同じであり、また、これまでの区長答弁にもかなうものです。 したがって、次期住宅マスタープランで、これらのことがしっかりと位置づけられるとともに実現を望むものですが、現時点での具体的な検討状況と制度設計はどのようにあるのでしょうかお答えください。 ◎区長(吉住健一) 吉住議員の御質問にお答えします。 新宿区総合計画(案)と組織等のあり方についてのお尋ねです。 初めに、総合計画を策定するに当たっての区民サービスの提供体制などの組織のあり方についてです。 新たな総合計画の策定に当たり、計画期間の10年間を見据え、基本政策に定める「暮らしやすさ1番の新宿」「新宿の高度防災都市化と安全安心の強化」「賑わい都市・新宿の創造」を着実に推進していくための組織改正を平成28年4月に行いました。 「暮らしやすさ1番の新宿」の推進に向けては、健康寿命の延伸や地域包括ケアシステムの推進、子育て環境の整備など、少子高齢化に対応するため、福祉部、子ども家庭部、健康部において課の新設や再編を行いました。 また、コミュニティ活動の支援の強化とライフステージに応じて誰もが気軽に生涯学習やスポーツに取り組める環境を整備するために、地域振興部を設置しました。 「新宿の高度防災都市化と安全安心の強化」の推進に向けては、危機管理担当部の設置と都市計画部に防災都市づくり課を設置することで、ソフトとハードの両面で、より一層施策の明確化と重点化を図っています。 「賑わい都市・新宿の創造」の推進に向けては、歴史、文化、芸術によるにぎわいづくり国際観光都市としての魅力の発信、新宿ブランドの創造、産業振興などにさらに取り組んでいくため、文化観光産業部を設置しました。 さらに、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催に向けて担当部を設置することにより、全庁横断的に対応できる体制を構築しました。 このように、平成30年度からの計画期間を見据えた組織体制のもと、新たな総合計画の着実な推進に取り組んでまいります。 次に、複数の分野の施策で対応するケースが増え、区民が複数の窓口を頻繁に訪れることを、区はどのように考えているかとのお尋ねです。 高齢社会の進展や生活様式の変化などにより、育児と介護をはじめ、さまざまな形のダブルケアの問題などが一般化し、区民サービスにおいても庁内横断的な対応が必要であることは認識しています。 区では、各部署において、窓口を訪れた区民の相談や手続の際に複数の相談内容がある場合には、関連する部署へ切れ目なくつなぐなど丁寧かつ的確に対応しています。 また、区民の相談等が複雑で多岐にわたる場合には、相談内容をよく聞き、必要に応じて関連する他の部署の職員が相談を受けている部署に出向き、個々の状況に応じた柔軟な対応をしています。 今後も、区民の視点に立って、区民サービスのより一層の向上を図ってまいります。 次に、平成11年度まであった福祉部総合相談室の位置づけと廃止の理由についてです。 総合相談室は、平成5年度に当時の原町及び高田馬場福祉事務所区役所本庁舎に事務所を統合することに際し、相談窓口として設置しました。 それまでは、生活保護の決定、保育所への入所措置、養護老人ホーム特別養護老人ホームへの入所措置、ホームヘルパーの派遣、日常生活用具の給付などの業務を福祉事務所で実施していました。また、医療費助成、紙おむつや各種手当の支給などについては、区役所本庁舎で実施していたところです。 総合相談室では、高齢者や障害者、母子、児童、ホームヘルパーなどの相談窓口体制を一本化することにより、用件を1カ所で済ませ、かつ総合的なサービスを提供し、たらい回しや二度手間などをかけないように活用を図ってきたところです。 その後、介護保険制度の発足に伴い、介護サービスの提供の仕組みが、それまでの行政による「措置」から、本人とサービス提供事業者による「契約」に変更されました。 こうした新たな仕組みに対応できる専門的な窓口相談体制が必要となり、平成12年度の福祉部組織の見直しに当たり総合相談室を廃止し、高齢、障害、児童など、それぞれ専門部署で対応することとしたものです。 現在、専門分野ごとに相談窓口は分かれていますが、互いに連携する体制をとっており、例えば障害者の方が65歳になり、介護保険の対象となった場合にも、情報の引き継ぎや担当者の同席などにより円滑にサービスの移行ができるようしています。今後も相談者に寄り添った丁寧な対応ができるよう、関係部署間での情報の共有と連携に努めてまいります。 次に、「高齢者食事サービス」と「子ども食堂」の一元化についてのお尋ねです。 まず、「高齢者食事サービス」は、高齢者を対象に閉じこもりの防止、社会参加を目的に、現在16の住民グループが食事サービスを提供しており、古くは約30年前から活動しているグループもあります。 一方、「子ども食堂」は、昨年4月の「新宿区子ども未来基金」の設置を契機に、孤食や育児の孤立化の防止等を目的に、区民の皆さんの自主的な活動が始まったところです。 御指摘のとおり、「高齢者食事サービス」「子ども食堂」は、ともに区民の方々が主体となって、「適切な食事の提供」と「孤食」防止という共通の課題解決に取り組んでいただいております。現状では、それぞれの活動グループの成り立ちや年齢層、考え方の違いもありますので、直ちに一元化することは困難だと考えています。 今後、地域の方々から高齢者や子どもという対象者の違いを超えた取り組みの提案があれば相乗効果も期待できることから、しっかりと受けとめ、具現化できるよう支援してまいりたいと考えております。 次に、組織間や業務に「狭間」をつくらないためにどのように取り組んでいるかとのお尋ねです。 区では、各部の経営会議において部内各課の業務の取り組み状況の確認や課題の整理を行い、連携を図りながら着実な事業の推進に努めております。 また、全庁的には区政運営会議において各部の情報を共有するとともに、共管的な事項については総合政策部が庁内横断的な調整を行うなど、組織や制度の狭間をつくらないように取り組んでおります。 次に、近居・同居等を中心とした住宅施策のあり方についてのお尋ねです。 親世帯と子世帯が近居・同居し、育児や介護、見守りについて互いに支えることや、子の成長等に伴い住みかえを要する子育てファミリー世帯が区内で住み続けられることは、区民の住まいの安定確保に重要なことと認識しています。 こうしたことは、次期住宅マスタープランで位置づけることを予定しており、現在、具体的な支援策を検討しているところです。 近居・同居を促進するための支援策については、親世帯または子世帯のいずれかが、区内に転入し近居または同居する場合や、区内に居住する親世帯と子世帯が新たに区内で同居する場合の、引っ越し代や契約に伴う諸経費に対する助成を検討しています。 また、子育てファミリー世帯に対する支援策については、区内で民間賃貸住宅や持ち家等から民間賃貸住宅に住みかえる場合の引っ越し代や、家賃差額に対する助成を検討しています。 こうした取り組みにより、誰もが安心して住み続けられる住環境の形成を図ってまいります。 ◆27番(吉住はるお) 次に、防犯対策の推進による安全・安心なまちづくりについて伺います。 平成29年10月20日の日本経済新聞の見出しには、「安全都市」、東京が世界一とありました。記事によると、イギリスエコノミスト誌の調査部門がまとめた、2017年の「都市安全性指数」ランキングで、東京が前回、2015年に続いて総合1位になったと報じていました。このことは、都庁のお膝元の新宿区民としては大変喜ばしいことでございます。 まず、このような報道に接せられての区長の御所見を伺います。 このようなうれしいニュースがある一方、地域社会においては、いつの時代にあっても、常に安全・安心は大きな関心事です。 平成28年度区政モニターアンケートによる「安全・安心」に関する項目の「あなたは、お住まいの地域で、犯罪への不安を感じることがありますか」の回答では、「不安を感じる(18.1%)」と「少し感じる(30.9%)」の合計は49%の5割弱でしたが、これを平成25年度から経年的に見ると、平成25年度は51.4%、平成26年度は52.6%、平成27年度は53.1%と高くなってきていたものが、平成28年度は49%と低くなっています。これを「不安を感じる」だけで見てみると、平成25年度は14.2%、平成26年度は15.2%、平成27年度は15.1%、平成28年度は18.1%と年々高くなってきており、厳しい状況と言えます。 アンケートで「不安を感じる」区民が、経年的に増えている状況は、急速に進む国際観光都市化と無縁ではないようにも感じるところですが、このようなアンケート結果や、区民の肌感覚としての地域差なども含め、区長の御所見を伺います。 次に、この「安全・安心」に関する項目の参考資料には、「新宿区総合計画・成果指標」が掲載されています。区政モニターアンケートにおいて「区民の日常生活における安心度」が計画の当初、平成19年度の22.8%が、平成28年度は48.2%となっていると示されています。そして、「平成29年度の目標」では、数値ではなく矢印で、「より高み」を指し示すようなニュアンスとなっています。 時代の変化に応じて、新たな課題の発生は尽きないところですが、このような区政モニターアンケートの結果を見ても、区民の「安全・安心」に関する意識が数字として大きく改善していることは間違いのないところです。新宿区では、防犯協会、町会や商店街などの地域の皆様や地域警察とともに、「新宿区民の安全・安心の推進に関する条例」制定をはじめ、「繁華街でのポイ捨て禁止」「歌舞伎町クリーン作戦」「歌舞伎町ルネッサンス推進協議会」「客引き行為等の防止に関する条例」などのさまざまな取り組みを進めてきました。 あわせて、それらを具体化した形でのパトロールなどが全区的な広がりを見せる中で、区民の「安全・安心」の意識に大きな良い影響を与えていると考えられます。これまでの区をはじめとする皆様の取り組みに改めて敬意を表すとともに高く評価いたします。今後ともアンケートなどの活用なども含め、区民に寄り添った「安全・安心」増進の施策を強力に推進していただきたいと思います。 そこで、区では「区民の日常生活における安心度」が平成28年度で48.2%という結果をどのように受けとめていらっしゃるのでしょうか。 あわせて、新宿区総合計画の10年間の成果指標では、平成29年度の欄には数値ではなく矢印で示されていますが、10年間の成果指標が具体的にはどのようであればよいとお考えなのでしょうか、御所見を伺います。 区民の方々の中には、いわゆるごみ屋敷や長期間の空き家、空き室の多い管理不全マンションなどが、地域の環境悪化を招くのではないかとの声が多くあります。また、今日では、民泊の問題も全区的な話題となっており、騒音やごみ出しなどの近隣住民とのトラブル、見知らぬ人の出入りへの不安の声も、私たちに少なからず寄せられています。 これらのことは、テロなどの犯罪の温床になるのではないかと心配する区民も多い状況です。こうした中、区では振り込め詐欺など、新たな「安全・安心」にかかわる問題・課題も発生しています。 区では、このような現状をどのように捉え、これまでどのように取り組まれ、今後どのようにしていくお考えなのか、区長の御所見を伺います。 この関連では、来年6月に施行が予定されている住宅宿泊事業法により、一定の要件を満たした住宅であれば、届け出を行うことで、民泊の実施が180日まで可能となります。この法の施行に向けて、新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例(案)が上程されているところですが、平成29年11月10日付の新聞記事によると、「規制が厳し過ぎると、地下に潜ってヤミ民泊を続ける人が増える。真面目に届け出たほうが損をする」という関係者の声が記事となっていました。 今回の条例案は、このような関係者の声も含め、騒音、ごみ出しのトラブルや見知らぬ人の出入りなど、周辺環境の悪化に関する区民の不安・心配に応えられるものとの認識でよいのでしょうか。また、ヤミ民泊を潜在化させないために、区としては住宅宿泊事業の開始に向けて、どのような対策をとっていくのでしょうか伺います。 最後に、危機管理力と安全についてです。 危機管理力は、区政のあらゆる場面でさらなる強化が求められています。今日、国際観光都市・新宿と言われる中にあって、海外からの観光客を含む多くの人たちが訪れ、今後ますますの増加が予想されています。いつ発生してもおかしくないと言われている新型インフルエンザなどの対策もとても重要だと考えますが、区の体制はどのように整備されていて、区民への啓発などの現状はどのようになっているのでしょうか伺います。 ◎区長(吉住健一) 防犯対策の推進による安全・安心なまちづくりについてのお尋ねです。 初めに、東京が世界一安全であるという報道についてです。 イギリスのエコノミスト誌がまとめた「都市安全性指数」ランキングで東京が世界1位になったという報道については、私もすばらしいことであると読ませていただきました。 この調査は、サイバーセキュリティ、医療・健康環境、インフラ、個人の安全の4分野の取り組みや犯罪件数などを数値化して評価したものであり、これらの取り組みを総合的に評価されたと捉えています。新宿区としては、今後も世界一安全な都市、東京の一角を担えるように、安全・安心の強化に取り組んでまいります。 次に、区政モニターアンケートにおける「不安に感じる」区民が増えていることについてです。 区政モニターアンケートの中で最も多くの人が「不安を感じる」理由として、「事件に関する報道が多いから」を挙げており、漠然とした不安感が反映されたものと思われます。しかし、区内の刑法犯認知件数は年々減少しており、アンケートの結果を捉えて治安が悪化したとは言えないと考えています。 犯罪は地域に応じて多種多様であり、今後も地域の状況に応じて、各種講習や安全・安心メール等で犯罪の現状や傾向などの情報提供を行い、地域の防犯意識の醸成を行うとともに、各種防犯活動を支援してまいります。 次に、区政モニターアンケートにおける「安心度」の結果と総合計画の成果指標についてです。 新宿区の刑法犯認知件数は、平成21年が1万968件でしたが、平成28年は6,973件であり、約37%減少しております。これは、区と警察、住民と連携してパトロール等の治安対策を実施した結果であり、これに伴い、安心度も48.2%に上昇したものと認識しております。 成果指標を数値ではなく矢印としていることについては、「安心度」は、治安対策と連動して多くの区民が安心して暮らしている実感を持っていただくため、可能な限り高めることを目標としていますので、上昇の矢印として指標設定をしております。 次に、特殊詐欺等、安全・安心にかかわる問題課題が発生している状況についてのお尋ねです。 犯罪は、日々新たな手法が生まれる現状にあります。区は、これまで警察と連携しながら最新の情報を共有し、安全・安心メールの配信などに取り組んでいるところですが、区内における特殊詐欺の発生件数は、一昨年58件、昨年75件、ことしは10月末現在92件と増加傾向にあります。区としても重要な問題と捉えており、今年度は自動通話録音機を500台購入し、区内警察署と連携しながら、9月から無償貸し出しをしており、10月末現在189台を貸し出しております。また、各特別出張所で開催される地区町会連合会で特殊詐欺の手口を紹介するとともに、自動通話録音機の無償貸し出しを紹介しております。今後も警察と情報を共有しながら、特殊詐欺のような新たな犯罪に対しても的確に対応し、暮らしやすく安全で安心なまちの実現に向けて取り組んでまいります。 次に、住宅宿泊事業についてのお尋ねです。 初めに、条例案が区民の不安・心配に応えられるものとして認識しているかについてです。 今回の条例案は、住宅宿泊事業法や政省令に加えて、都市型民泊に関する新宿区ルールを定めることで、区民の不安や心配に応えていくものと認識しています。 騒音等の周辺地域の生活環境の悪化の防止については、法及び条例案で事業者の責務としています。 特に、ごみの適正な処理については、条例案で、事業系廃棄物として事業者がみずからの責任で適正に処理することを規定しています。 また、見知らぬ人が出入りするなどの不安や心配の軽減を図るために、事業者が周辺地域の住民に事前に連絡先や事業開始日等を書面で説明することを定めています。 条例案の作成に当たっては、法の趣旨、新宿区民泊問題検討会議での御意見、日々寄せられる区民からの相談等を踏まえ、検討してきました。 区としては、住民生活に最も身近な基礎自治体として、「区民の生活環境の悪化を防止すること」を主たる目的としつつ、規制が厳し過ぎることにより無届け民泊が潜在化することのないように配慮した内容としています。 次に、ヤミ民泊を潜在化させないための住宅宿泊事業の開始に向けての対策についてです。 区は、今回の条例制定及び来年6月15日の法施行に向け、区民、事業者、宿泊者へ、わかりやすいリーフレットやルールブックを作成・配布し、制度の周知を図るとともに、届け出の促進に努めます。 また、違法民泊に関しては多くの苦情や相談があり、旅館業法違反として指導監督していますが、住宅宿泊事業の開始に向けて、新たに、届け出の受け付け、届け出に基づく現地確認及び指導監督等の事務が発生します。これらの対応を適切に行い、ヤミ民泊の潜在化を防ぐためにも、民泊対応の窓口となる健康部衛生課の職員体制等の充実が必要と考えています。 さらに、旅館業法の改正が今後予定されており、無届け民泊に対して立入検査等の創設や罰則規定の強化がなされることから、警察等関係機関とより緊密に連携して対応していきます。 以上の取り組みにより、ヤミ民泊の潜在化の防止に努めてまいります。 次に、新型インフルエンザ等の対策についてのお尋ねです。 御指摘のように、海外からの観光客が増加する中、新型インフルエンザ等が発生した際には、容易に国境を越えて持ち込まれる事態が想定されます。 区では、平成19年に「新宿区新型インフルエンザ対策行動計画」を策定するとともに、他区に先駆けて「新宿区新型インフルエンザ対策連絡会」を設置し、医師会、薬剤師会、歯科医師会、医療機関、警察・消防等との連携を図ってきました。 行動計画については、平成21年の新型インフルエンザの世界的大流行や平成24年の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」施行を踏まえ、平成26年に見直しを行いました。 また、区内の医療機関が相互に連携して感染拡大を抑制し、速やかに必要な医療を提供できるよう、「新宿区新型インフルエンザ等対策地域医療包括BCP」も策定しています。 これらの計画等に基づき、さまざまな状況を想定した訓練も関係機関と連携し実施しており、発生時に備えた体制整備を進めています。 区民への啓発としては、新型インフルエンザを含め感染症に関する正しい知識の普及のため、区ホームページへの掲載を行っているほか、保育園、小・中学校、保健センター、イベント会場などでのパンフレットの配布等を行っています。 今後も、海外から多くの人たちが訪れることを想定し、さらなる対策の強化を進め、発生時に備えてまいります。 ◆27番(吉住はるお) 次に、地域において自助・共助の意識を醸成させる方策について伺います。 防災・減災の取り組みでは、住民の自助・共助の意識を高めることが重要だとよく言われます。 このことは、防災対策に限らず、社会保障制度においても「共助」が「互助」という言葉に言いかえられることもありますが、同様に重要な要素として位置づけられています。 平成24年に民主・自民・公明3党の議員立法で成立した社会保障改革推進法の基本的な考え方では、「自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じて、その実現を支援していくこと」とされています。まさに国をはじめとして、各自治体は急速に進む少子高齢化、人口減少社会において、さまざまな行政サービスを安定的に提供できる体制をつくっていくためにも、「いかにして住民の自助と共助の意識を高めていくのか」がとても大きな課題となっています。 「自助」とは、文字どおり、自分自身の困難な問題には、他人を頼るのではなく、まずは自分自身が考え行動し、問題解決に向け努力するという意味です。 そもそも行政が行う防災減災対策や社会保障などは、「自分ができることは自分でやる」という自助を前提に制度設計されています。 しかし、現代社会においては、「困ったときは行政が何とかしてくれるから大丈夫だ」とか、「まず、どこまで行政が面倒を見てくれるのか」と考える方も少なからずいるのが現実です。 そのため、これまでも新宿区においては、区立全小・中学校において防災教育を実施したり、区民に救命講習の受講を勧奨したり、介護予防教室を廉価で実施するなど、自助の精神を涵養すべくさまざまな事業を行い、成果を上げています。 また、このたび健康長寿社会を目指し、「(仮称)しんじゅく100歳トレーニング」を推進し、健康ポイントを導入するなど、積極的に区民の自助の力を高める施策に取り組まれており、そのことを私は高く評価しています。 本来、自助の精神は、これまでの人類の歴史を見ても、当然のように多かれ少なかれ人それぞれに備わっているものです。区民一人ひとりの潜在能力をいかに引き出していくのか、今後も新宿区の手腕が試される面もあるとは思いますが、多くの区民に自助の精神が広く深く浸透することを大いに期待しているところです。 一方、「共助」とは、一番小さな単位では家族もそうですが、町会・自治会などの地域コミュニティでお互いに助け合うことを主に意味しています。 「自分たちの地域は、自分たちで守る」、「困ったときは、お互いさまで支え合おう」といった共助の精神を育むことは自助の精神が前提になるとも考えられますが、非常に難しい課題です。 以前の日本では、祖父母、親、子の三世代同居の家庭も少なくなく、家族の支え合いという共助の仕組みが機能し、子育てや介護などを家族が担ってきました。しかし、近年の急速な核家族化の進行などにより、家族による共助の機能は衰退し、それと同時に、近所や地域コミュニティでの人づき合いも希薄になりつつあります。 新宿区においても、地域コミュニティの核とも言える町会や自治会の加入世帯の減少や役員の高齢化などに対応して、町会連合会とともに町会加入を促すマンション居住者用のパンフレットを作成するなど、積極的に地域コミュニティの支援に取り組まれていますが、大きな社会の流れを変えるところまでには至っていないようにも感じます。 共助とは、もともと社会の正式な制度ではなく、自発的な住民の自由な意思の「かたまり」として地域の環境の中で築かれるものであり、行政が意図的に地域において共助の関係を構築することは容易ではありません。しかし、「困ったときはお互いさま」という共助の精神も、自助と同様に人類がもともと自然に持っているはずのものであり、根気強い地道な取り組みが重要なのだと思います。 そこで伺いますが、介護保険法においては、介護保険給付の前提として、国民がみずからの健康増進を行い、要介護状態になることを予防するよう努める義務を定めているように、介護保険制度などの社会保障制度は、衰退しつつある「自助」や「共助」にとってかわるものではなく、あくまでも「自助」や「共助」では対応し切れない部分に対応し、補うものです。 介護保険や行政の支援は、最終的には必要な全ての人に安定的に提供されるべきものですが、個々人の努力によって回避、または軽減できるケースもあります。 自助や共助の積極的な取り組みは、結果として社会保障制度の持続可能性を高め、住民の安心感にもつながると考えられるところから、地域においてこうした意識を共有させていくことが重要です。 そのためにも、私は介護サービスなどの社会保障制度の利用が必要になる前に、できる限り早い段階から介護保険などの社会保障制度について住民の正確な理解を促進するための取り組みが必要なのではないかと考えます。 埼玉県和光市では、長年にわたり、地域の自治会や住民グループの求めに応じて、介護保険に関する出前講座を行い、その制度の解説だけではなく、基本的な考え方も含めて丁寧に説明する事業を実施しているとのことです。 新宿区においても、地域住民に、介護保険に限らず広く社会保障制度の基本的な考え方などを啓発する事業の実施を検討してはいかがかと考えますが、区長の御所見をお聞かせください。 また、厚生労働省では、中高生向けの社会保障教育の教材を作成するなど、社会保障教育を推進しています。区内の区立中学校においても社会保障教育の実施を検討すべきと考えますが、教育委員会のお考えをお聞かせください。 次に、防災・減災対策による共助の醸成について伺います。 平成23年に発生した東日本大震災では、「公助」を担う市町村自体が津波で壊滅的な被害を受け、被災者を十分に支援できない市町村があらわれる事態に陥りました。このような状況下では、被災した地域住民による自助が重要になったほか、地域コミュニティの住民や事業者による助け合いである「共助」が地域住民の避難支援、被災者の救出・救護などに大きな役割を果たしたと言われています。 このような「公助の限界」を目の当たりにし、地域コミュニティにおける「自助・共助」が重要な役割を果たしたという教訓を踏まえ、国では平成25年災害対策基本法の改正において、地域コミュニティの防災活動に関する「地区防災計画制度」を創設しました。 「地区防災計画」とは、地区居住者や事業者などにより自発的に行われる防災活動に関する計画であり、地区居住者などの意向が強く反映されるボトムアップ型の計画だとされています。 地区防災計画を規定する方法としては、市区町村それぞれの防災会議が、地域の意向を踏まえつつ、地域コミュニティにおける防災活動計画を地区防災計画として市区町村防災計画に規定するケースと、地区居住者などが地区防災計画の素案を作成して、市区町村防災会議に対して提案を行い、その提案を受けてそれぞれの防災会議が、地域防災計画に地区防災計画を定めるケースがあるとのことです。 この地区防災計画は、地域に住んでいる住民などが主体となってつくるので、地域の実態に即した実践的な計画となり、計画策定の過程では、「防災」という多くの地域住民の関心が高いテーマを地域が主体となって話し合うことにより、地域住民や事業者の間で新たなネットワークが形成されたり、お互いさまの意識や信頼関係が構築されて地域の人間関係がよくなったりと良好な地域コミュニティの構築にもつながるのではと期待されています。 まさに、理想的な計画のようにも感じますが、この計画は、いわば共助という自発的な意思の集合体を計画という形で具体的に担保していく取り組みであり、計画を実際に策定することは容易ではないようにも思えます。 地区防災計画は単に計画を作成するだけではなく、実際の災害時に計画に基づいた防災活動が行われるよう、日ごろより頻繁に行政と連携した防災訓練を行ったり、事前に「誰が、何を、どれだけ、どのようにすべきか」などを定めることになり、それらを安定的に担う地域人材の確保も必要となります。 核家族化が進み、人口流動性が高い新宿区において、地域住民の負担が非常に大きいと思われるこの計画を直ちに策定することは現実的ではないのかもしれません。 しかし、それでは、なぜ私が今回あえて地区防災計画を取り上げたのかというと、防災という多くの区民や事業者が高い関心を持つテーマを地域が主体となって話し合うこの取り組みは、地域で共助の精神を醸成する手法として効果的なのではないかと考えたからです。実際の計画策定には至らなくても、その過程を通じて今まで交流が余りなかった地域住民と地域の事業者などが顔の見える関係になるだけでも意義のあることと考えます。 これまで新宿区では、本塩町において町会などの地域住民と事業者との連携をコーディネートするなど、地域の連携・協力体制の構築に取り組んでこられたことは承知しておりますが、なかなか全区的な動きにはなっていないようにも感じます。 区は、災害時における地域の連携・協力体制の構築を通じ、地域の共助の精神を醸成するよう、より積極的に取り組むべきと考えますが、区長の御所見を伺います。 ◎区長(吉住健一) 地域で自助・共助の意識を醸成させる方策についてのお尋ねです。 まず、地域住民に社会保障制度の基本的な考え方などを啓発する事業の実施についてです。 例えば、介護保険では、平成17年度から実施している「介護モニター」事業において、会議の場で制度の説明を行うとともに、施設見学で現場の様子も実感していただいています。また、「ふれあいトーク宅配便」のメニューとして、町会や住民グループに出向き、介護保険制度に関する御説明をしています。さらに介護保険事業計画の改定に合わせ、3年に1回、「介護保険べんり帳」を作成し、高齢者世帯に各戸配布しています。 医療・年金の分野でも同様の周知を図っているところですが、さらに連携した取り組みとしては、今年度の各種計画策定に当たって高齢者部門と健康部門が連携して地域説明会を開催し、それぞれの視点から地域の支え合いの重要性やみずからの健康に取り組む必要性などをお伝えしたところです。今後も時機を捉えてさまざまな施策や事業を推進する中で、社会保障制度の意義や区民一人ひとりの取り組みの重要性などを理解していただけるよう努めてまいります。 次に、災害時における地域の連携・協力体制の構築と共助の精神の醸成についてのお尋ねです。 大地震などの大規模災害発生時に大切な生命・財産を守るためには、まず自助による事前の備えと適切な行動、そして地域での被害拡大防止のために、地域住民と事業者等の共助による活動が非常に大切です。 御指摘のとおり、急速な核家族化や少子高齢化などによる地域との結びつきの希薄化が懸念される中、強固な地域防災体制の構築のためには、防災区民組織を中心に民生委員・児童委員をはじめとする地域団体や事業者などが日ごろから「防災」をテーマとした活動を実施し、顔の見える関係を築いていくことが重要であると考えています。 現在、幾つかの地域においては、地区防災計画の趣旨である「一定の地区の居住者及び事業者が行う自発的な防災活動」として、防災区民組織と事業者等が連携して地域防災コミュニティを構築し、定期的な防災会議や実践的な防災訓練に取り組んでいます。 引き続き、防災区民組織や事業者等が自主的に行う防災勉強会をはじめ、地域防災協議会や避難所運営管理協議会、防災イベントなど、さまざまな機会を捉えて、地域と事業者等との連携による共助の重要性について積極的に周知・啓発し、地域防災力の充実・強化を推進してまいります。 ◎教育長(酒井敏男) 教育委員会への御質問にお答えします。 区立中学校における社会保障教育の実施についてのお尋ねです。 日本の社会保障が前提としている考え方やその内容について学習することは、これから社会保障制度を維持し、自助・共助を支えていくために重要であると考えています。 中学校では、社会保障制度について社会科公民的分野で教科書をもとに学習しています。学習指導要領では、日本国憲法第25条の精神に基づく社会保障制度の基本的な内容の理解をもとに、その充実・安定化を図っていく必要があることを理解できるようにすることが示されています。 そのため、生徒は社会保障の起こりや日本の社会保障制度の種類などについて学ぶとともに、財政の現状や少子高齢社会など現代社会の特色などを踏まえながら、受益と負担の均衡のとれた持続可能な制度を構築することなど、これからの福祉社会について考える学習を行っています。 中央教育審議会答申や新学習指導要領でも社会保障の意義について理解することの重要性が示されており、区立中学校では、これまでの学習を進めつつ、子どもたちの自助、共助の意識をより一層高められるよう指導を充実してまいります。 ◆27番(吉住はるお) 次に、新宿区産業振興プランに関連して、今後の新宿区における地域経済について幾つか質問いたします。 現在の日本経済は、平成24年12月からの景気拡大が58カ月間にわたり続いており、その長さも戦後2番目に長い「いざなぎ景気」を超えた可能性が高いと言われています。 しかし、私たち区民には、そうした実感がなかなか持てないというのが実情です。戦後2番目に長い好景気とはいえ、年平均で1%台と非常に緩やかな成長であって、これも景気回復の実感が湧かない一因であると思われます。 ただ、それ以上に大きな要因は、賃金の伸びが鈍いことであって、バブル期のように、誰もが好景気を実感できるほど収入はふえない一方で、社会保険料などの負担はふえ、自由に使える可処分所得の伸びが鈍いことが、消費者心理に大きく影響しているのだと思います。 今後ますます労働生産年齢人口が減っていく中で成長力を高めるためには、労働生産性を向上させる必要があると言われています。カギを握るのが人工知能やあらゆるモノがネットにつながるIoT、ロボットなどの第4次産業革命と言われるものであり、世界的に注目を集めています。日本政府も推進に力を入れていて、企業も関連投資をふやしています。この波にうまく乗って成長力が高まれば、個人の収入も国の税収もふえ、今より景気回復を実感できるようになるのではと期待されています。 これは日本社会全体の事柄ですが、新宿区では区民がいかに景気回復を実感し、今後の明るい未来を望むためにどのようなことが必要なのでしょうか。大都市である新宿区においても、25.1%という多くの区民が新宿区内に勤務先を持ち、また8.6%の区民が自宅で従業しているところから、地域経済の活性化は区民の生活の安定につながり、また区内産業の活性化が区税の増収をもたらすと考えます。 区民にとっても、自治体としての新宿区にとっても「地域経済の活性化」は大切なものです。今後10年の変化はさらに不透明さを増していくことが予想されます。そのような中で、新宿区における地域経済の活性化の現状と課題をどのように捉えているのでしょうか、区の御見解を伺います。 次に、新宿区における特徴的な産業についてです。 「新宿区中小企業の景況」では、「地場産業である染色業、印刷と印刷関連業をはじめ、特徴的に集積している10業種」について調査されていて、その中に「不動産業」も入っています。この「不動産業」が10業種の一つに位置づけられている理由について、まず伺います。 大都市新宿区では人口の流動性も高く、学生も多いことなどもあって、自己所有の住宅というのは比較的少なく、したがって、住宅の多くがいわゆる賃貸となっています。 また、地域の小規模な企業などの入るビルは、個人所有によるものが多く、オーナーの多くが賃貸業を主な生業としているケースが多いなど、不動産の賃貸業は大都市新宿区における「地場産業」という位置づけも可能なようにも思いますが、区長の御所見を伺います。 自己所有不動産の賃貸を商売とされている方たちの多くは、小規模ビルでの事務所貸しであったり、アパート経営であったりします。そのような方々に共通する課題には、小規模で築年数が長いということで、空き室が目立ったり、古いアパートなどではリフォームでお金をかけて新築同様に改築しても、賃料は築年数に影響されて抑えられてしまうなどの課題があるようです。 「産業大分類」による新宿区での事業所数が1割を超える「不動産・物品賃貸業」における「ビルオーナー」や「アパート賃貸業」の方々の現状と課題をどのように捉え、区として何か施策化を図られているのでしょうか伺います。 次に、新宿区産業振興プラン(素案)に関連して幾つか伺います。 プラン策定の根拠となる「産業振興条例」の前文には、「産業は、私たちの生活と地域社会に密接な関わりを持つものである。産業は、私たちの生活に必要とされる様々な物やサービスを提供するとともに、それらの物やサービスの循環を通じて新たな物やサービスを生み出し、地域ににぎわいと豊かさをもたらし、私たちの生活を向上させ、地域社会を発展させてきた」とあります。 そのような新宿区の産業ですが、「新宿区中小企業の景況」調査(平成29年7月から9月期)では、全般的な業況DIはマイナス27.8と、前期(平成29年4月から6月)のマイナス26.3から悪化し、来期(平成29年10月から12月)の見通しはマイナス22.4で、やや改善する見込みとしています。このようなことを念頭に、幾つか質問いたします。 産業振興プランでは、「経営の安定化」で主な課題の一つに「必要人材の確保・育成」があり、また「新宿区中小企業の景況」(平成29年7月から9月期)では、「経営上の問題点」としての第2位に「人手不足」が挙がっています。国レベルの人手不足問題では、日に日に不足感が増し、企業の中には営業時間の見直しまでも検討せざるを得ない状況が報道されているところですが、区内の状況や区の支援状況はどのようであるのでしょうか伺います。 最後に、ICTを活用した事業展開についてです。 産業振興プランでは、「ICTを活用した事業展開支援」が掲げられています。このことは国においても同様ですが、今日の経済のグローバル化の中では、また人手不足を補うものとして事業活動へのICT導入は不可欠となっています。事業者、商店会などの当事者がそれぞれの役割を果たすのは当然ですが、区としては支援などについてどのように取り組んでいかれるのか、御所見を伺います。 ◎区長(吉住健一) 地域経済の活性化についてのお尋ねです。 初めに、地域経済の活性化の現状と課題についてです。 地域経済の活性化のためには、地域の実情や企業の抱える課題に的確に応じた産業振興施策の展開が重要です。これまで平成20年度からの新宿区産業振興プランに基づき、中小企業支援、商店街活性化支援、創業支援など、さまざまな事業に取り組んできました。しかし、この間にはリーマンショックや東日本大震災などの予想を超えた事態により経済は大きく減退いたしました。 現在の地域経済の状況については、地域や企業の業種、規模等によっても異なりますが、観光客の増加や、それを見越したホテル等が建設されるなど、徐々に活気を取り戻していると感じています。 一方、企業の事業展開に影響を与える環境変化が急速に進む中で、経営者にとっては先行きが不透明で困難な時代とも言えます。 現在策定中の新宿区産業振興プランでは、平成28年度に行った「新宿区産業と企業の事業活動に関する調査」の結果から課題を捉え、事業革新の取り組みを行った企業が比較的好況であることを踏まえた「価値創造に向けた積極的な事業活動の推進」や経営者の高齢化の進展を踏まえた「発展的な事業承継の促進」などの方向を示し、取り組みを進めてまいります。 また、地域経済を支える商店街の活性化も引き続き課題と捉え、「商店街の魅力アップ支援」など、さまざまな支援を通して地域経済の活性化に向けた取り組みを強化してまいります。 次に、新宿区における特徴的な産業についてのお尋ねです。 新宿区の産業は、業種や規模、操業年数など多様な事業所が集積していることが大きな特徴です。平成26年経済センサス基礎調査では、卸売業・小売業が19.1%、宿泊業・飲食サービス業が18.4%、不動産業・物品賃貸業が11.5%で上位を占め、景況調査においては、こうした産業構造を考慮して業種の選定を行っているところです。 地場産業については、新宿区では企業の集積や歴史的な背景等を踏まえ、染色業と印刷・製本関連業を位置づけており、不動産賃貸業は区の特徴的な産業として捉えているところです。 また、「ビルオーナー」や「アパート賃貸業」の方々の現状と課題については、東京2020オリンピック・パラリンピックに向け、区内各地で建てかえ等が行われるなど、新築物件の供給増に伴い、築年数の古い建物では空室が増加している状況も見られます。経営者の方の高齢化や建設コストの高騰など、大きな課題となっています。 こうした中、区では空き店舗情報サイトによる空き物件の情報提供、不動産賃貸業を営む方を対象とした改修・改築等の資金の融資などを通して支援を行っています。 次に、新宿区産業振興プラン(素案)に関連して、必要人材の確保についてです。 区内の雇用の状況について、ハローワーク新宿が管轄する企業の平成29年9月の求人倍率は、フルタイム1.76倍、パートタイム2.16倍と高い状況になっていますが、実際に就職した数では有効求人数の1万7,826人に対して充足した数は859人にとどまり、人手不足は深刻な状況にあります。 区では、こうした区内中小企業の人手不足に対応するため、U29就職マッチング支援事業を実施し、若者に対してサイトやイベント等を通じて区内中小企業の魅力を発信することでマッチングの支援を進めています。その結果、今年度は10月末現在で「U29しごと図鑑」掲載企業等に16名の就職が決まっています。また、従業員の定着率の向上を目的とした処遇改善や非正規従業員の正規雇用化に取り組む「“働きたい職場づくり”応援事業」を実施し、参加企業の積極的な取り組みにより定着率が向上するなど成果を上げています。 さらに、今年度から新たに、女性の働き続けられる職場環境の整備を支援しつつ、区内中小企業への女性の就職を支援する「女性の活躍推進企業サポート事業」を開始しています。 こうした若者と企業側への双方の働きかけを通して、今後も引き続き地域経済を支える区内中小企業の人材確保に真摯に取り組んでまいります。 次に、ICTを活用した事業展開への支援についてです。 ICTの活用は、生産性の向上や業務の効率化等、人手不足を補うものとしての活用が期待されています。 ICT活用を促進していくため、ICT活用に関する知識の普及や情報提供が必要であり、11月17日に開催した新宿区産業振興フォーラムでは、「最先端ICTを活かせ!」というテーマで経済産業省から講師をお招きし、国の新産業構造ビジョンについてわかりやすく解説していただきました。 また、パネルディスカッションでは、「カメラ画像やGPS情報を収集し、IoTとAI技術を組み合わせてデータ解析する技術」や「QRコード利用で多言語による情報発信を行うアプリケーションと観光客のアクセス情報によるマーケティングへの活用」などの紹介もあり、参加者から「ICTの活用について考えるきっかけになった」などの声が寄せられました。 今後は、こうした最先端技術や活用方法の情報提供を積極的に進めるとともに、情報通信業との連携による相談の場の提供、情報技術活用促進資金の制度融資などの施策を複合的に組み合わせ、ICTを活用した事業展開を支援してまいります。 ◆27番(吉住はるお) 次に、平成30年度からの国民健康保険制度改革について伺います。 国民健康保険制度は、保険給付費を「公費」と「保険料」で賄う仕組みであって、本来は保険料5割、公費5割であるはずのものです。 しかし、現状は市区町村も法定外の一般会計繰入金で保険給付費の一部を負担しており、さらに特別区にあっては、「保険料」に統一保険料制度を導入してきた経緯などから、本来、制度で想定されている保険料水準よりも低く抑えられ、一般会計からの繰り入れが行われているのが実情です。 このような中、国においては、平成25年12月公布のいわゆる「社会保障制度改革プログラム法」を経て、平成30年度から「都道府県が財政運営の責任主体となること」や「保険料の平準化」、そして「法定外一般会計繰入金の解消」の3つを主な改革のポイントとする国民健康保険制度改革を実施するとしています。 この新制度の移行に対して、特別区長会では、平成30年度「国の施策及び予算に関する要望書」において、「国民健康保険の被保険者は高齢者が多いことなどから、加入者1人当たり医療費が高い一方、低所得者が多いために保険料負担能力が低いという構造的な課題を抱えている。 さらに、特別区においては、高度医療機関の集積や高額医薬品の使用などに伴う医療費の急増が国民健康保険運営を大変厳しいものとしていることに加え、大都市特有の事情として、転出入率が高いことなどにより保険料徴収に関して非常に厳しい環境下に置かれるなど、保険者の努力だけでは解決し得ないさまざまな課題を抱えている。 このため、国民健康保険制度が安定的かつ持続的に運営できるよう、次の方策を講じること」として、1、保険者への財政支援と被保険者の保険料負担軽減策の拡充、2、制度改正に伴う確実な激変緩和措置の実施、3、高額医薬品の低廉化や後発医薬品の使用促進による医療費適正化への措置の実施、4、多子世帯への支援、を要望しています。 この区長会の要望にも見られるように、この制度改革で最も関心が寄せられているのは保険料についてです。そういう意味では、法定外一般会計繰入金の解消についても強く関係しているのだと思います。 このたびの制度改革による広域化で、平成30年度から東京都が国民健康保険の財政運営責任主体となります。広域化が財政規模の面での一定の安定化をもたらすという利点も考えられますが、しかし、一方では、相変わらず伸び続ける医療費を考えると新宿区としては決して安閑としていることは許されません。制度の持続性を高めるためにも、今後とも現場に最も近い保険者として新宿区が、一層の努力を続けなければならないと考えますが、区長の御所見をお聞かせください。 また、保険料による納付金についてですが、それらの額がどのようなものになるのでしょうか。特に、この納付金額は年齢構成の差異を調整した後の医療費水準と所得水準などの調整を行って算出されるようですが、新宿区は医療水準や所得水準がどのような状況であり、それを反映した納付金はどのようになると予想されるのでしょうか、お答えください。 あわせて、区長会の国への要望の「制度改正に伴う確実な激変緩和措置の実施」の中に、「被保険者の急激な保険料負担を緩和するためのきめ細かい激変緩和策を講じる」という文言がありますが、区長会としては、この点では今回の制度改革実施に対してはどのような認識を持ち、どのような立場で臨まれているのでしょうか伺います。 次に、法定外一般会計繰入金の解消の問題についてです。 法定外一般会計繰入金の解消は、このたびの制度改正の大きなポイントの一つとなっています。国は平成26年度全国の法定外一般会計繰入金約3,468億円に見合う約3,400億円の公費の拡充を行うとのことです。このようなことなどを含めて、新宿区としては繰入金の解消についてはどのような見通しをお持ちでしょうか。あわせて、当区における現在の法定外一般会計繰入金は保険料の約何%に相当するものとなっているのでしょうか伺います。 次に、23特別区独自の課題の一つに、都区財政調整で一定程度の財源を確保し、23区間の財源負担を調整していることがありますが、今後の取り扱いについて区長会などではどのような議論がされているのでしょうかお答えください。 最後に、健康保険事業の進め方についてです。 医療費の適正化とともに国民健康保険財政健全化への取り組みに側面から寄与、貢献するものに健康増進事業があります。 既に区では、これらの事業に医療保険年金課だけではなく健康部の他課や福祉部など区の総力を挙げて取り組んでおり、私も高く評価しています。今後は、その結果として、それらの事業が国民健康保険財政や区民の健康にどのような効果を上げているのか常に検証し、失敗を恐れず見直すべきときにはしっかりと見直して、よりよい取り組みになるよう研さんを重ねるべきと考えますが、区長の御所見を伺います。 ◎区長(吉住健一) 平成30年度からの国民健康保険制度改革についてのお尋ねです。 初めに、国民健康保険制度改革後の保険者としての努力についてです。 今回の制度改革は、国民健康保険において公費を拡充するとともに、都道府県を新たに保険者として財政運営の責任主体とすることにより、財政基盤の強化と制度の安定化を図るものです。 一方、区市町村は、引き続き保険者として資格管理、保険給付、保険料の決定、賦課・徴収、保健事業等の地域におけるきめ細かな事業を行うこととされています。 区は、今後とも制度を持続可能なものとするため、保険料収入の確保と医療費の適正化について保険者として一層の努力が求められているものと考えています。 次に、区の医療費水準と所得水準、及び標準保険料と納付金の見込みについてです。 都の平成30年度の納付金及び標準保険料の試算結果によりますと、区の医療費水準は1人当たりの医療費について全国を1とした場合の指数が0.962となっています。所得水準は、1人当たりの医療分の保険料賦課基準所得が70万860円と、都平均の75万3,473円を下回っています。 区の医療費水準と所得水準が比較的低くなっているのは、被保険者のうち20歳代の構成割合が平成28年9月末現在で22.7%と、都全体の10.8%に対して高く、若い人の割合が多いことが影響していると考えられます。 また、区の標準保険料は、医療分・後期支援金分・介護納付金分を合わせた1人当たり保険料額で見ると15万2,994円と、都全体の15万2,522円に対して、ほぼ同水準となっています。 納付金については、区の1人当たりの金額で17万995円と、都全体の17万2,631円を下回っています。この納付金は、保険給付費に必要な費用として都から区市町村に交付するための財源となるものです。 なお、標準保険料及び納付金については、年末に国が決定する診療報酬の改定などを受けて都が再算定を行い、最終的な金額が決まります。 次に、制度改革に当たり、国に激変緩和策に関する要望を行った特別区長会の認識と立場についてです。 今回の制度改革は、各区とも、国民皆保険を守るため、国民健康保険財政の安定化や保険料負担の公平の実現を目指して、着実に対応していく必要があります。 一方で、被保険者にとって、急激な保険料負担の上昇を招くことになれば、制度改革に対する理解が得られにくいと考えたところです。 このため、各区が責任を持って改革を円滑に実施できるよう、特別区長会として、国の責任において、きめ細かな激変緩和策を講じることを要望したものです。 次に、法定外一般会計繰入金の現状と解消の見通しについてです。 法定外繰入金に相当する金額については、本来、保険料として賦課・徴収すべきものですが、平成28年度の保険料収入に対する法定外繰入金の割合は、ほぼ3分の1となっています。 今回の制度改革により、全国の法定外繰入金の規模に見合う約3,400億円の公費拡大が図られますが、保険者ごとの配分については、低所得者の数や医療費適正化への取り組み状況などに応じて行われる見込みです。 法定外繰入金の解消の見通しについては、現時点では具体的にお示しできませんが、医療費の動向や制度改革による保険財政への影響などを見きわめながら、計画的・段階的に進める必要があると考えます。 次に、都区財政調整の今後の取り扱いについてです。 現在、都区財政調整で算定されている国民健康保険事業助成費については、制度改革後に生ずる法定外繰入金を算定の対象とするか否か、また算定する場合はどのように各区に配分するかなど、12月からの都区財政調整協議の中で決定してまいります。 次に、区の総力を挙げた健康増進事業が国民健康保険財政や区民の健康に与えた効果と、その検証についてです。 区が健康増進事業を進めることは、疾病の発症予防や重症化予防による医療費の適正化につながり、国民健康保険財政の健全化に資するものと考えます。 区では、これまで生活習慣病予防や健康づくり、介護予防に関するさまざまな事業に取り組み、健康寿命の延伸を目指してきましたが、この間の状況を見ると、要支援1、または要介護2以上の認定を受けるまでの状態を健康と考えた場合の65歳健康寿命では、男女とも延伸傾向にあります。 区民の健康状況をあらわすデータとしては、健診結果やさまざまな調査結果を用いて分析・評価を行ってきましたが、今後は、さらに国民健康保険の被保険者のレセプトデータから成るKDBシステムを活用して、区民の健康状況や医療費の適正化の状況を検証し、実態に即して健康増進事業の改善を図るよう取り組んでいきたいと考えています。 ◆27番(吉住はるお) 最後に、学校教育における自助・共助・公助のそれぞれの役割について伺います。 政府の教育再生実行会議、第10次提言の表題は、「自己肯定感を高め、自らの手で未来を切り拓く子供を育む教育の実現に向けた、学校、家庭、地域の教育力の向上」です。 そして、以下、冒頭部分を引用いたしますが、「我が国の未来、それは子供たちです。全ての子供たちが、自らの個性を発揮し、自信をもって自らの未来を、自らの手で切り拓く。子供たちの誰もが夢と志に向かって頑張ることができる国創りに向けて、教育再生を行っていかなければなりません。 子供たちが夢と志に向かって頑張れる国を創るには、学校、家庭、地域がそれぞれの役割と責任を自覚し、社会全体で子供を育むことが必要不可欠です。しかしながら、今日の学校教育の現場に目を向けると、教師の多忙化が頂点に達しようとしています。 言うまでもなく、家庭や地域は、学校教育の土台となるものです。学校の教育力が低下しないようにするためには、家庭や地域の教育力の向上が欠かせません。一方で、共働き世帯やひとり親家庭の増加など家庭の在り方は多様化しています。また地域も、本格的な少子・高齢社会を迎え、過疎化や高齢化が全国の地域で進んでいるという状況にあります」とあります。 私は、今日の日本の学校教育の現状とあるべき方向性を的確にあらわしていると思いますが、まず教育委員会は、この提言の内容についてどのように受けとめているのでしょうか、御所見を伺います。 次に、提言では、また、以下引用いたしますが、「日本の学校は『知・徳・体の一体的な教育を進める』という特長を有しているがゆえに、あたかも学校のみが日々生起する様々な課題に対応する役割と責任を有しているかのような、認識が生じやすい状況にあるといっても過言ではありません。 換言すれば、教育にあっても、自助、共助、公助がある中で、公助のみに頼ることが当然視される状況にあるとも言えます」と指摘しています。 提言にもあるように、そもそも教育においては、公助としての学校、自助としての家庭、共助としての地域が有する教育機能はそれぞれに異なり、いずれか1つの教育機能のみで子どもたちの育成が図られるわけではなく、学校、家庭、地域の3者がそれぞれの立場から子どもの教育に責任を持ち、それぞれの教育機能をいかんなく発揮し、相互に連携・協力しながら子どもを支え、育んでいくことが重要です。 このことは、先ほどの質問でも述べたように、教育だけが特別なのではなく、社会の全ての物事には、おのずと自助、共助、公助がそれぞれに持つ役割と責任があり、学校教育にあっても、公助としての学校のみに頼るのではなく、自助としての子どもを含めた家族の頑張りとしての教育力、そして地域社会の教育力が求められていると考えます。 区長主宰の「総合教育会議」では、このようなことに対する議論はどのようであるのでしょうか伺います。 また、教育委員会としては、家庭の教育力や地域社会の教育力向上という点では、どのように取り組まれているのでしょうか伺います。 今日では、子どもを取り巻く社会環境や家庭環境も大きく変化しています。「平成28年版情報通信白書」によれば、スマートフォンの世帯保有率は、統計をとり始めた平成22年においては1割弱でしたが、平成28年では7割強となっており、わずか7年ほどで保有率は7倍となりました。 また、総務省情報通信政策研究所の「平成28年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によれば、10代のスマートフォンの利用率は、今日7割を超える状況にあります。 そのほかにも保護者の就業状況の変化を見ると、「両親ともに仕事のある世帯」と「片方の親しか仕事のない世帯」の数は、約10年前を境に逆転し、今では前者が後者の世帯数の2倍の数に上るなど、子どもを取り巻く家庭環境も大きく変化しています。 このような変化が学校教育の現場にも大きな影響を与えているものと思います。また、であるからこそ、学校として家庭や地域社会に期待することも変化してきているものと考えますが、教育委員会としてこのような現状をどのように捉え、どのように対処されているのでしょうかお答えください。 次に、具体的に自己肯定感の育成における家庭教育支援の充実について伺います。 親から理解されている、愛されているという感覚を持っている子どもは自己肯定感が高いとの分析結果があります。乳幼児期における絶対的な自己肯定感の育成には、保護者、または保護者にかわる存在から愛情を受けることが必要不可欠だと言われています。 「早寝早起き朝ごはん」など、全ての子どもの生活習慣改善に向けた取り組みを初め、地域における総合的な家庭教育支援の充実に向けた取り組みを進めるとともに、保護者に対してICTなどを通じて生活習慣の正しい情報を効果的に発信していくことが重要だと考えますが、教育委員会の取り組み状況と課題などがあればお聞かせください。 次に、新宿区教育ビジョン(素案)における家庭や地域の教育力の向上の取り組みについてです。 まず、家庭の教育力向上の取り組みについてです。 素案の一部には、「家庭を取り巻く状況は、経済状況の変化やライフスタイルの多様化のほか、女性活躍社会の実現に向けた取組みがより進む中で、今後も一層変化するものと考えられます。親が子育てについて学ぶ機会や、子どもと一緒に過ごす時間・過ごし方等がそれぞれの家庭により異なる中にあっても、すべての子どもの可能性を最大限に伸ばし、社会性・人間性を育むことができるよう、家庭の状況に応じた子育て支援や、親の学び・育ちを応援するための方策が求められている」とあります。 このことは、今日の日本全体にも言えることですが、とりわけ大都市新宿区においては、その状況が過度に進んでいるようにも思われます。 私は、このような取り組みは、今後最も力を入れていくべき施策の一つであり、その点では「取り組みの方向性」を示し、具体的な「個別事業」を積極的に推進していくことが重要であると考えますが、御所見をお聞かせください。 最後に、地域の教育力向上の取り組みについてです。 平成29年度には、全ての区立小・中学校が地域協働学校になったとありますが、このことにより地域の教育力向上がどのように図られたのか、また課題にはどのようなことがあり、そのために今後どのように取り組まれていくのか、具体的にお聞かせください。
    ◎区長(吉住健一) 「総合教育会議」における自助・共助・公助に対する議論についてのお尋ねです。 新宿区における教育、学術及び文化の振興に関する目標や根本的な方針を位置づけた「新宿区教育大綱」に基づき、この間、教育委員会とは区の教育が抱える課題等について議論を深めてまいりました。 それらの議論の中で、私は、学校、家庭、地域のそれぞれの立場が持つ役割や特色を活かして、子どもたちの育ちを見守ることの重要性と三者が連携することが子どもたちを育む大きな力になるとの意見を述べさせていただきました。 今後は、小・中学校の連携により地域協働学校の仕組みがさらに充実することで、地域ぐるみで子どもの一貫した成長を支える仕組みへと強化されることに期待しています。 ◎教育長(酒井敏男) 教育委員会への御質問にお答えします。 初めに、教育再生実行会議の第10次提言の内容の受けとめについてです。 教育委員会では、この提言と同じく、教育は学校だけで行われるものではなく、家庭や地域社会が学校と一体となって子どもたちの学びと育ちを支えることが重要であると考えています。 家庭や地域社会は、子どもたちにとって実生活や実社会について体験的・探究的に活動できる場であり、子どもたちの社会性や人間性を豊かにしていく重要な役割があります。 教育委員会では、これまでも地域協働学校の取り組みなどを通じて、学校と家庭、地域が一体となり、子どもたちの成長を支援する環境づくりを進めてきました。今後もこれらの取り組みを一層推進し、家庭や地域の教育力のさらなる向上を図っていきます。 次に、家庭や地域社会の教育力向上の取り組み状況についてのお尋ねです。 教育委員会では、家庭の教育力向上のための支援として、保護者が家庭教育におけるみずからの役割や重要性を認識するとともに、孤立することなく子育ての悩みを共有し、安心して家庭教育を行うことができるよう、さまざまな学びの機会を提供しています。 また、地域の教育力向上に関しては、地域協働学校の活動を通じて学校と地域とが連携・協働して子どもたちの豊かな学びの環境をつくり、子どもたちの成長にかかわる取り組みを積極的に推進しています。 11月17日に開催された平成29年度第2回総合教育会議では、地域協働学校の一層の推進のための取り組みの充実や、さまざまな困難を抱える家庭への支援のあり方などについて、区長と各教育委員との間で積極的な意見交換が行われました。 区長と教育委員会とが現状や課題を共有し、それぞれに取り組みを進めることを確認したことにより、今後は家庭や地域の教育力向上の取り組みを一層推進できると考えています。 次に、家庭や地域社会の変化に対する認識と対応についてです。 御指摘のとおり、子どもたちを取り巻く社会環境や家庭環境が大きく変化する中で、家庭にスマートフォンが普及した結果、家族間の連絡や会話がメールやSNSを通じて行われるなど、親子のコミュニケーションには変化が生じてきています。また、保護者の就業状況の変化や長時間労働などさまざまな理由により、家族のコミュニケーションの機会についても減少傾向にあるとともに、地域の人間関係も従来より希薄化してきているものと認識しています。 教育委員会では、こうした状況であっても、家庭や地域の重要性は変わらないとの考えのもと、「家庭学習のすすめ」や「家庭教育ワークシート」、情報モラルのリーフレットを作成し、親子のかかわり方や生活習慣改善の取り組み、SNS利用に関するルールづくりなどについて情報提供を行うことにより保護者の学びを支援しています。 また、今年度、全小・中学校を指定した地域協働学校の取り組みを通して、社会全体で子どもたちの学びと育ちを支える環境の充実を図っています。 次に、ICTなどを通じた情報発信の取り組み状況やその課題についてです。 さきに述べた「家庭教育ワークシート」や「家庭学習のすすめ」は、学校を通して配布するとともに区のホームページに掲載し、保護者がいつでも閲覧やダウンロードをできるようにしています。 しかし、家庭にスマートフォンが普及している現状やICTを活用した情報発信が一層重要になってきていることなどから、今後はフェイスブックやツイッター等を利用した情報発信について研究し、家庭教育支援の充実に向けた取り組みをさらに進めてまいります。 次に、教育ビジョン(素案)における家庭や地域の教育力向上の取り組みについてのお尋ねです。 教育委員会では、家庭教育は全ての教育の出発点であり、子どもの豊かな情操や基本的な生活習慣、家族や他人に対する思いやり、社会的なマナーなどを育むために大変重要であると考えています。 これまでも講座などの開催や家庭教育ワークシートの配布など、さまざまな支援を行ってきました。 しかし、御指摘のとおり、家庭を取り巻く状況が大きく変化する中で、保護者が家庭教育の重要性を認識し、安心して子育てができるようにするためには、さらに効果的なアプローチの方法などについて保護者に直接ヒアリングするなどして研究し、一層取り組みを進めることが必要であると考えています。 今後は、研究を重ねながら教育ビジョン(素案)に掲げた取り組みの方向性や個別事業を積極的に推進し、保護者の学びをしっかり支援することにより、家庭の教育力の向上にしっかりと取り組んでまいります。 次に、地域の教育力向上の取り組みについてのお尋ねです。 御指摘のとおり、平成29年度から全ての区立小・中学校が地域協働学校となりました。地域協働学校として、既に一定の年数が経過した学校では、地域の方による授業協力などの学校支援活動が活発に行われています。また、地域の大学や企業などとの連携を進めている学校もあり、子どもたちの学びや経験が一層深まっています。 一方、全小・中学校の半数以上は、地域協働学校となって2年以内であり、子どもたちの学びの環境を豊かなものとするための支援について、地域と学校とが意見交換しながら充実を図っている状況です。 また、地域協働学校としての活動が活性化してきた学校では、従来の地域の人材だけでなく、より多様な担い手を発掘することが必要になってきています。 さらに、地域の方々からは、ただ学校を支援するのではなく、支援活動を通して地域と子どもたちとの顔の見える関係づくりを進め、次代の地域コミュニティを支える人材を育成することも期待されています。 こうした課題を踏まえ、平成30年度からは学校運営協議会と地域との連絡会を設置し、地域が一体となって子どもたちを育む環境づくりを一層進めます。 さらに、小中連携型地域協働学校の実施により、地域ぐるみで子どもの一貫した成長を支えるとともに、地域社会を担う人材の育成へとつなげていきます。 これからも地域の教育力を向上させ、子どもたちの豊かな学びの環境づくりを推進してまいります。 以上で答弁を終わります。 ◆27番(吉住はるお) 区長並びに教育長におかれましては、御丁寧な御答弁をありがとうございました。 また、途中ちょっとせき込みましてお聞き苦しいところがありましたことをおわび申し上げます。 これにて私の質問を終わらせていただきます。皆様、御清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(佐原たけし) ここで、議事進行の都合により休憩します。 △休憩 午前11時43分--------------------------------------- △再開 午後1時14分 ○議長(佐原たけし) ただいまから、会議を再開します。 質問を続行します。 1番豊島あつし議員。     〔1番 豊島あつし議員登壇、拍手〕 ◆1番(豊島あつし) 公明党の豊島あつしです。平成29年第4回定例会に当たり、新宿区議会公明党を代表して、区長並びに教育委員会に質問させていただきます。どうか誠意ある御答弁をよろしくお願いいたします。 先日、東京ビッグサイトで開催された「地方自治情報化推進フェア2017」に参加してきました。セキュリティや基幹系システムが中心だった昨年の展示に比べて、ことしはマイナンバーの活用やAIに関する展示が一気にふえ、自治体経営における時代の転換点がすぐ近くまで来ていることを実感しました。 例えば、「自治体におけるAIの活用」というプレゼンテーションでは、介護や子育ての実績をAIが分析し、課題点を可視化させ、見通しを予測することで政策形成のスピードを加速させたり、これまでケース会議を開催することで対応してきた困難事例のアセスメントをAIが行い、相談者とのコミュニケーションを助け、スキルやスケジュールを考慮して担当者を人選・対応することで住民福祉を飛躍的に向上させたりするなど、AIを活用した価値創造が示されていました。 また、同時に職員負担も大幅に軽減できるとも説明があり、少子高齢社会に立ち向かう新しい行政サービスのあり方を導いていました。 大きな変化の波は、もう目の前まで迫ってきています。この波にのまれてしまうのか、それともこの波を乗りこなすのか。その違いは、この波をどのように捉えているかという「ものの見方」、「智慧」にあるのではないでしょうか。過去の延長線上に解決策を求めるだけでは、この波にのみ込まれてしまいます。 私たち新宿区議会公明党はどこまでも区民目線に立ち、新たな「ものの見方」で「智慧」を湧かせ、これから大きな変化の波に直面していく区政を推進してまいりたいとの決意を申し上げ、以下質問に入ります。 質問の第1は、活力ある産業が芽吹くまちの実現について伺います。 平成30年から始まる新たな「新宿区産業振興プラン」は、社会経済状況の変化や区内企業・商店会等の現状・ニーズを踏まえ、これからの10年間の産業振興の基本目標や施策の方向性を明らかにするとともに、産業施策を効果的かつ効率的に実施することを目的に策定されます。 これまで新宿区産業振興会議で協議を重ね、説明会やパブリック・コメントが行われました。今後の新宿区のさらなる産業振興への取り組みに期待し、5点伺います。 1点目は、新宿区産業振興プラン(素案)の施策の一つである、価値創造に向けた積極的な事業活動の推進について伺います。 この施策の具体的な取り組みとして、新たな事業展開へのチャレンジ支援があります。商品・サービスの品質の向上や開発、新たな事業の創出等に積極的にチャレンジする企業や商店会、団体を支援するとありますが、どのような事業を想定されているのか伺います。 我が会派は、産業振興のさらなる推進のために、特にスポーツ産業や区民の健康増進に資する事業への支援は、今後10年間を見据えて大変重要な事業であると考えます。区の御所見を伺います。 2点目の質問は、スポーツの推進と産業振興について伺います。 2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、国際的なスポーツ大会が続きます。スポーツ産業は、プロ・アマチームの興行・放送をはじめ、各種競技用品の製造・販売、フィットネスクラブの経営など裾野の広さが特徴であり、欧米諸国では有望な産業と位置づけ、投資を加速させています。 国においては、スポーツ庁と経済産業省で「スポーツ未来開拓会議」を立ち上げ、スポーツ産業の振興施策について有識者を交えて協議を行い、我が国のスポーツ産業振興の戦略的な取り組みを示す「スポーツ産業ビジョン(仮)」を作成する予定です。 新宿区では、新宿シティハーフマラソンを初め、コミュニティスポーツの推進や障害者スポーツ、アダプテッドスポーツ、ウォーキングなど、全国的に見てもスポーツの推進に積極的に取り組んでいます。 今回の新宿区産業振興プランの策定に当たり、スポーツの推進と関連した取り組みを大きく前に進めるべきと考えます。区の御所見を伺います。 3点目の質問は、経営基盤の強化支援について伺います。 新宿区産業振興プラン(素案)では、区内企業の事業革新や新たな価値創造にチャレンジしていくために必要な経営基盤の強化を支援することとしています。その取り組みの一つとして相談機能の充実があります。区は、区内企業が抱える問題や課題の解決に迅速に対応できる相談機能を設置するとしていますが、具体的にどのような機能を設置するのか伺います。 また、相談機能充実の取り組みとして、神奈川県商工連合会では県の補助を受け「小規模企業応援隊」を創設し、小規模企業に国・自治体の支援制度を直接伝え、活用を促す取り組みを昨年度スタートしました。 この事業は、実務経験で培ったスキルを社会貢献に活かすボランティア活動「プロボノ」を取り入れています。「プロボノ」を取り入れた相談支援事業の展開は、人材確保の観点からも今後広まっていくものと考えます。この点もあわせて、区のお考えを伺います。 4点目は、創業チャレンジ支援について伺います。 区は、これまで創業相談やセミナー開催、インキュベーション施設の運営、融資制度のさまざまな創業支援に取り組んできました。今回の新宿区産業振興プラン(素案)では、産業経済団体や金融機関との連携を強化し、創業しやすい環境の充実を図ることとしています。平成20年度に新宿区産業振興プランの策定後、創業チャレンジ支援についてどのように総括されているのか伺います。 また、新たな新宿区産業振興プラン(素案)には、多様な創業者への支援を行うとしています。中小企業白書によると、起業家に占める60歳以上の割合は32.4%(2012年)と30年前(1982年)の4倍となっています。区としてもシニア世代に対して、創業のきっかけづくりや具体的な創業のノウハウについて情報を得ることができるセミナー等をさらに充実すべきと考えます。区の御所見を伺います。 5点目は、ICTを活用した事業展開について伺います。 ICTの活用については、政府が5月末に新IT戦略「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」を策定しました。我が党は計画の策定に当たり、国民の幸福のために活用される「人間中心のICT社会」を基本理念とする提言を政府に申し入れました。提言では、同計画に出生や結婚などライフイベントに係る煩雑な行政手続のワンストップ化の実現や、社会的弱者のICT利用支援、IT人材の育成などの視点が盛り込まれています。また、医療機関の間で患者情報を共有可能にする「医療等ID制度」の導入や民間企業が利活用できる政府系API(データベースの統一基準)の整備、多言語対応音声翻訳の精度向上なども要請しています。 同計画によれば、平成29年5月現在、オープンデータに取り組み済みの地方公共団体は279団体で全体の15%となっています。また、平成29年中には、地方公共団体が最低限公開することが望ましいデータセット・フォーマット標準例の提示などを行い、平成32年度までに地方公共団体のオープンデータ取り組み率100%を目標にしています。 区は、平成28年度から区が保有する公共データをオープンデータとして二次利用できるようホームページ上にまとめて掲載し、オープンデータの検索や取得を可能とするポータルサイトの運用を開始しています。 新宿区産業振興プラン(素案)では、オープンデータの公開・活用支援を拡充するとしています。企業が自社の事業を客観的に見直し、分析を行ったり、事業革新や新事業創出を図ったりするために、必要な基礎データ(地域データ)をオープンデータとして公開し、企業が活用できるよう支援するとしています。今後、区は区内事業者に対してどのようにオープンデータを公開するのか、利活用の方法を丁寧に説明することも大事です。区の御所見を伺います。 また、区のオープンデータの公開について、民間企業が利活用できる政府系API(データベースの統一基準)の整備など、国の動向や他自治体の取り組みをこれまで以上に積極的に取り入れていくことが求められます。この点、区のお考えを伺います。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 豊島議員の御質問にお答えします。 活力ある産業が芽吹くまちの実現についてのお尋ねです。 初めに、価値創造に向けた積極的な事業活動の推進についてです。 現在、新宿区産業振興プラン(素案)では、区内産業の特徴や現状、事業環境の変化等を踏まえ、10年後に目指す基本目標として、「革新と創造に取り組む企業の集積と持続的に発展する産業システムの形成」を設定しました。基本目標の実現に向けた7つの産業振興施策の方向の一つとして、「価値創造に向けた積極的な事業活動の推進」を掲げています。 具体的には、新商品や新サービス開発事業に対する助成や、展示会等出展支援の拡充、金融機関等との連携による商談会の開催、地場産業団体のインバウンドを意識した「しんじゅく逸品」の開発等、新たな事業の創出を支援し、区内産業の活性化を図ってまいります。 また、新たな価値創造に向けた分野として、スポーツ産業や区民の健康増進に資する事業についても大切であると考えておりますので、新商品・新サービスの開発に対する助成や展示会等への出展支援など必要な支援を行ってまいります。 次に、スポーツの推進と産業振興についてのお尋ねです。 2019年のラグビーワールドカップの開催や東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を控え、スポーツに関する区民の関心が高まる中で、競技人口の裾野の広がりなど、経済に対する波及効果も期待できるところです。 このため、ことし9月発行のビズタウンニュースでは、「スポーツ産業に見るものづくりの知恵」をテーマに、スポーツ用品の分野で魅力的な製品開発や商品販売を行っている区内企業を特集しました。 今後も、国際的なビッグイベントを契機としたさまざまな取り組みや、区民の健康志向の高まりによるスポーツの実践などを背景とするスポーツ推進の事業にあわせ、産業振興の視点からも事業者への支援を進めてまいります。 次に、経営基盤の強化支援についてのお尋ねです。 区では、資金調達等の経営上の相談を受ける商工相談、中小企業診断士等を事業所に派遣するビジネスアシスト新宿など、課題解決のための支援を行っています。今後、少子高齢化の進行、ライフスタイルや働き方の変化、情報化のさらなる進展など、中小企業の事業環境に影響を与える変化が予測される中、経営者にとって先行きが見通しにくい時代となっています。 こうした経営上のさまざまな課題に対応できるよう、ビジネスアシスト新宿事業で派遣する専門家を拡充するほか、大学等の教育研究機関、金融機関、東京商工会議所新宿支部等と連携した相談機能の充実を図ってまいります。 また、プロボノ等の活用についても、他自治体の事例を情報収集しながら検討するなど、経営基盤の強化支援に取り組んでまいります。 次に、平成20年度からの新宿区産業振興プラン策定後の創業チャレンジ支援についてのお尋ねです。 平成23年10月に高田馬場創業支援センターを開設し、創業支援の拠点と位置づけてオフィススペースを提供するほか、インキュベーションマネジャーの資格を持つ専門家による支援を行ってきました。 これまでの利用状況は、平成29年11月1日現在で104名の方に御利用いただき、退所された方が83名、そのうち区内創業された方が32名で、区内創業率は約39%となっています。 また、高田馬場創業支援センターにおける創業支援のほか、区内創業を前提とした特定創業支援事業を実施し、区の商工相談員や東京商工会議所新宿支部の相談員によるワンストップ相談窓口事業、高田馬場創業支援センターや金融機関で開催した「創業セミナー」に多くの方に参加していただくなど一定の成果を上げ、創業を目指す機運の醸成が図られていると評価しているところです。 今後も引き続き、区内で創業を目指す方や創業間もない方への支援に力を注ぎながら、活力ある産業が芽吹くまちの実現に取り組んでまいります。 次に、シニア世代に対する創業のきっかけづくりやセミナー等の充実についてのお尋ねです。 高田馬場創業支援センターでは、区内で創業予定の方、創業間もない方などを対象に、月4回、無料相談会や「創業セミナー」を実施し、シニア世代を含む広範の方々に参加いただいています。今後も、幅広い世代の方々が身近な地域で御参加いただけるよう、内容や開催場所等を工夫し、創業支援事業を利活用できる機会の拡充に努めてまいります。 次に、ICTを活用した事業展開についてのお尋ねです。 企業の活力を生む事業革新や新事業創出を促すには、ICTを活用した事業展開の中でもオープンデータの利活用は、とても重要であると考えています。 御指摘のとおり国では、平成29年5月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」に基づき、官民データ連携のための標準化等を進め、オープンデータを積極的に推進していくこととしています。 区では、「新宿区オープンデータの推進に関する指針」を定め、オープンデータを公開する際には、利用者が必要とするデータをできる限り使いやすい形式で提供するよう努めており、今後も国の動向や他自治体の取り組みを踏まえ、積極的に民間企業も含め利用者が利活用しやすい公開を進めていきます。 区内事業者のオープンデータの利活用については、今後、区が保有するデータで中小企業の事業展開に役立つ、事業者のニーズに即したデータを事業者と協議しながら検討し、二次利用しやすい形式で公開してまいります。 また、公開に際しては、セミナーの開催やビズタウンニュースによる情報提供など、さまざまな機会を通して周知に努め、利活用の方法等についても丁寧に説明してまいります。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第2は、新宿区の魅力ある観光施策について伺います。 日本政府観光局によると、本年1月から9月の訪日外国人数(推計値)は、前年同期比17.9%増の2,119万6,400人となり、過去最速のペースで2,000万人の大台に乗せ、右肩上がりにふえています。 また、年間の訪日客数は昨年の2,403万9,700人がこれまでの最高でありましたが、ことしはこのままのペースでふえ続ければ、2,800万人を大きく超える可能性が高いとも言われています。 このような状況の中、今後、ますます観光施策の取り組みは重要な役割を担うものと考えます。新宿区においては、平成26年4月、新宿観光振興協会設立以降、観光案内所の設置や観光情報の発信、さらには観光に関するイベントの開催など、さまざまな事業に取り組まれ、大きく観光施策を推進されてきたことを高く評価いたします。 しかし、一方では、伸び行く観光客に対してさらなる取り組みが求められています。 1点目の質問は、新宿区の観光施策の現状と今後について、区長はどのような認識をお持ちか、お考えをお聞かせください。 2点目の質問は、新宿観光案内所についてです。 新宿を訪れる人々に新宿区の魅力や観光スポット、イベントなどの各種情報を提供する新宿観光案内所は、昨年の12月にオープン以来、窓口への来所者数は本年10月までで21万9,629人と数多くの方が来所されています。 また、テレビ等メディアにも数多く取り上げられ、観光案内所にチラシやパンフレットを設置したいという企業・団体が増加し、さらに商店会・その他、地元の方々など関係者からも観光案内所に対するお声をいただき、期待はさらに高まり、今や新宿の観光の顔となっています。 開業時間は10時から19時、対応スタッフは平日2名、土日祝日3名体制で当初はスタートしましたが、ふえ続ける来所者数に対応するため、本年4月から平日の14時から19時までを3名体制にして取り組まれてきたとのことです。 私もこの間、何回となく現地を視察しましたが、午前中から多数の来所者があり、相談時間も長いケースもあることから、対応に追われている状況も見受けられました。 今後も訪日外国人旅行者の増加などにより、さらなる観光案内所利用者の増加が見込まれる中、利用者の方に適切なサービスを提供し御満足していただくためにも、案内所スタッフの拡充が必要であると考えます。お考えをお聞かせください。 また、新宿区の友好都市である長野県伊那市より、新宿東南口駅前広場の再整備に合わせ寄贈、植樹いただいたタカトウコヒガンザクラがありますが、観光案内所周辺のより一層のにぎわいを創出するため、サクラの咲き薫る時期に、効果的なイベントを開催してはいかがでしょうか。 3点目の質問は、新宿の観光情報の発信の核となる情報誌「新宿plus」についてです。 「新宿plus」は新宿の魅力を紹介するほか、イベントやグルメなど情報満載のフリーペーパーとして年2回(1回につき10万部)が発行されており、区公共施設、新宿観光案内所、鉄道、ホテル、商店等の観光案内・協力拠点200カ所に配布されています。 1回の発行に係る取材、基礎デザイン、編集作業等に係るコスト削減と「一般誌とは違うものをつくりたい」とのこだわりもあり、企画と取材の一部を観光振興協会で行うことから、かなりの手間がかかっているとのことです。そのため、「新宿plus」は大変好評で、継続的な人気があり、発行部数の不足が懸念されます。 今回の新宿区第一次実行計画(素案)においては、不足の要因であるイベント分2万部を増刷し、年間で22万部の発行が計画されていますが、今後、東京2020オリンピック・パラリンピック開催に向けた大規模なイベント開催など、必要部数がふえることも想定されることから柔軟な対応が望まれると思います。お考えをお聞かせください。 4点目の質問は、海外へのプロモーションについてです。 海外に向けて新宿の魅力を伝えるため、これまでプロモーション動画やパンフレットなどを作成、活用して海外旅行博覧会等への出展や、新宿観光案内所のデジタルサイネージなどPRに取り組まれてきています。 一定程度の効果は期待されるものの、まだまだ限られた範囲の中での事業になっているように感じます。「国際観光都市」としてブランド力を上げていくためにも、さらなる海外へのアクションが重要であります。 今回の新宿区第一次実行計画(素案)においても、海外へのプロモーションを計画していますが、どのような取り組みで、どのような効果をお考えなのか、今後は「新宿の魅力」をしっかりと海外に提供していくことが必要であると思います。お考えをお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 新宿区の魅力ある観光施策についてのお尋ねです。 初めに、新宿区の観光施策の現状と今後についてです。 観光施策の推進は、多くの方が新宿を訪れることでまちのにぎわいを創出し、飲食やショッピングなど、さまざまな消費行動を通して地域経済の活力を生む原動力となります。こうした効果を期待できる観光施策は、まちの元気を呼び起こし、持続的に発展し続ける新宿を実現する施策の柱の一つと認識しています。 御指摘のとおり、平成26年4月には新宿の観光振興を担う官民一体の組織である新宿観光振興協会を設立し、多彩な新宿の魅力の発信、イベントによるにぎわい創出、新宿観光案内所の運営など、オール新宿で観光事業に取り組んできました。 また、区では、外国人観光客から要望の強かった公衆無線LAN「新宿フリーWi-Fi」の整備や外国語を併記した観光案内標識の設置など、観光客が回遊しやすい環境整備も進めているところです。 外国人観光客が増加する中ではありますが、新宿観光案内所の利用者も10月には20万人を超える盛況ぶりであり、これまでの取り組みの成果として一定の評価ができるものと受けとめています。 今後も東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて観光客のさらなる増加が見込まれる中で、大会後も観光客が区内各エリアを回遊しながら新宿の多彩な魅力を体感し、何度も訪れたくなる国際観光都市であり続けることが必要であると認識しています。 そのため、ハード・ソフトの両面で取り組みを進め、地域団体や地元企業の皆様とともにオール新宿で観光施策を推進してまいります。 次に、観光案内所のスタッフ拡充についてです。 昨年12月にオープンした新宿観光案内所は、御指摘のように、開設以来、利用者は増加の一途をたどっています。今年度は、開設後の利用状況の分析から、平日の午前中の時間帯は2人態勢にしていましたが、利用者の増加とともに午前中にもお客様にお待ちいただくことが多くなってきました。 新宿観光案内所は、新宿を訪れた外国人観光客が最初にサービスを利用する新宿の顔となる重要な観光情報発信拠点であり、新宿の魅力を十分にお伝えし、おもてなしできるよう、しっかりと対応していくことが必要であると考えています。 そうしたことから、今後、スタッフの拡充につきましても利用者の状況を踏まえ、適切に配置してまいります。 次に、新宿東南口駅前広場でのイベント開催についてです。 友好都市である伊那市から御寄贈いただいたタカトウコヒガンザクラがことし3月に開花したときには、多くの外国人観光客が足をとめ、桜をバックに写真撮影するフォトスポットになっていました。 来年の桜の時期にも同様のにぎわいが見込まれることから、伊那市観光協会と新宿観光振興協会でコラボレーションして、にぎわいを創出するイベント企画の調整を進めているところです。 来年の桜の時期に多くの来街者が訪れる東南口広場で、タカトウコヒガンザクラが咲き薫る中、友好都市である伊那市の観光PRに加え、新宿の新たな桜のスポットを観光案内所とあわせてPRしていきたいと考えています。 次に、新宿の観光情報誌「新宿plus」についてです。 「新宿plus」は、新宿の多様な観光資源をきめ細かく情報提供し、区内を回遊していただくことを目的に、新宿観光振興協会発足時から定期的に発行しています。 現在、7号まで発行しておりますが、いずれの号も大変好評いただいており、号によっては不足が生じている状況です。 今後は、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けたイベントなども含め、さまざまな機会を捉え、新宿の魅力をしっかりと発信していくことが大切であると考えておりますので、発行部数についてもさらに柔軟な対応が図れるよう情報発信に努めてまいります。 次に、海外へのプロモーションについてです。 御指摘のとおり、海外へのプロモーションについては、平成27年度に制作したプロモーション動画「SHINJUKU 9 Stories」(新宿ナインストーリーズ)を活用し、海外旅行博覧会での活用や旅行会社の海外代理店へのDVD配布など、海外に向けたPRに取り組んできましたが、今後もさらなるプロモーションが必要と認識しています。 そこで、第一次実行計画(素案)でお示ししたとおり、外国人旅行者向けの情報誌の誌面枠を確保して、新宿の多様な観光情報を掲載することで新宿の魅力をさらに発信していきたいと考えています。誌面枠を確保することにより、海外の方々に自国にいながら新宿を知る機会を創出し、新宿に行ってみたいと思っていただくきっかけづくりを進めます。 また、海外の方々にお伝えしたい、選りすぐりの情報を掲載することが可能であり、一定のシェアを持ち情報提供ルートも確立されていることから大きな効果が期待できます。 今後は、こうした取り組みを含め、積極的な海外プロモーションを通して、海外では知られていない新宿の新たな魅力を発信し、新宿の知名度や認知度を上げることにより国際観光都市としてのブランド力の向上に努めてまいります。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第3は、健康政策の着実な推進について伺います。 先日、福祉健康委員会で山口県宇部市が行っている「はつらつポイント制度」について視察させていただきました。 この制度は、40歳以上の市民が健康づくりの活動を行うための動機づけとして、平成24年7月から始まった事業です。 具体的には、健康づくりに関するイベントや講座への参加、がん検診などの受診や、みずから立てた健康目標の達成などによってポイントが付与され、換金できることも特徴の一つです。 開始当初は576名だった登録者数も平成28年度末には4,413名と4年間で7.6倍に増加。視察に伺った直近での登録者数は5,000名を超えたそうです。 その背景には、所管の職員の御努力はもちろん、例えば、新しい市道が開通すると、その開通式でウォーキングイベントを実施し、参加者にはポイントを付与するなど、全庁をあげた取り組みも大きな要因であったと思いました。 さらに、地元信用金庫では、「はつらつポイント制度」の登録者を対象とした「はつらつポイント応援定期預金」という金融商品も開発。民間との連携もしっかり行っていました。 新宿区でも来年度からの実施を検討している健康ポイント事業について、着実に事業を推進していくためにも、非常に示唆深い視察であったと思います。 生涯、心身ともに健康で暮らせる健康寿命の延伸は、社会的な課題解決のための重要な政策であり、区民お一人お一人が幸せに暮らしていただくための基盤であるとも言えます。 そのためにも健康政策は着実に推進されるべきと考え、以下3点にわたり質問いたします。 1点目の質問は、健康づくりに関する事業間の連動性についてです。 来年度から始まる新宿区第一次実行計画(素案)では、健康づくりに関する事業として「健康ポイント事業」「健康な食生活へのサポート」「ウオーキングの推進」「高齢期の健康づくりと介護予防の推進」など、新規も含め、数多くの事業や取り組みが挙げられています。 これらは一つ一つが大変重要な施策ではありますが、単体で実施するよりも事業を連動させることで、その効果を増すことはできないでしょうか。 健康ポイントとウオーキングの連動は既にお考えかと思いますが、野菜摂取の普及啓発や生活習慣病予防のイベント参加、あるいは女性の健康支援センターでのさまざまな取り組みなど、区が行っている健康づくりに関する事業が有機的に連動できれば、施策は着実に推進すると考えます。 さらには、健康部所管の事業だけでなく、宇部市のように区道の開通に合わせたウォーキングイベントの開催など、他部門での事業とも連動する仕組みが必要かと考えます。 特に虚弱高齢者でも取り組むことができる「(仮称)しんじゅく100歳トレーニング」は、実施される場所や住民主体を考えると、健康部よりも、むしろ福祉部の事業との関係性が非常に深いと考えます。そのため、単に部門連携ということではなく、健康部が行う健康づくりの事業と福祉部が行う地域包括ケアの事業を、有機的に連動させていくことが重要です。 そこで伺いますが、健康づくりに関する事業間の連動性については、どのようにお考えですか。健康部内の事業はもちろん、他部門が行っている事業との連動性も非常に重要であると考えます。御所見を伺います。 2点目の質問は、全庁的な取り組みの推進についてです。 先ほども例に挙げたような他部門との事業連動は、健康部が考えることも大事ですが、他部門が主体的に「この事業は健康ポイントと連動できそうだ」と発想することのほうが、アイデアも数多く生まれると思います。 また、広報活動は何よりも重要です。所管発の情報発信も重要ですが、テレビ・新聞などのマスコミでのパブリシティを強化するには、広報部門による区としての活動が欠かせません。 そこで伺いますが、健康づくりに関する全庁的な取り組みとしてどのようなことを考えていますか。 庁内推進会議等の会議体が存在していることがその一つであるとは思いますが、主体的な発想を促すためには、さらなる取り組みが必要であると考えます。御所見を伺います。 3点目の質問は、保健センターの管轄区域と高齢者総合相談センターの管轄区域についてです。 先ほども申し上げたとおり、健康づくりに関する事業間の連動性のうち、特に健康部の高齢者の健康づくりに関する事業と福祉部の地域包括ケアに関する事業は、対象者・実施場所・主催者等を考えると、決して切り離して考えることはできないと思います。 そこで、連携をさらに密なものとするためには、現在は一致していない保健センターの管轄区域と高齢者総合相談センターの管轄区域を一致させていくことが始まりとなるのではないでしょうか。 そこで伺いますが、保健センターの管轄区域を高齢者総合相談センターの管轄区域に合わせることについて、どのようにお考えでしょうか区の御所見を伺います。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 健康政策の着実な推進についてのお尋ねです。 初めに、健康づくりに関する事業間の連動性についてです。 御指摘のとおり、健康部の事業のみならず、他の多くの事業と連動させることは、より多くの区民が健康的な生活習慣に取り組むきっかけとなり、大変有効であると考えています。 例えば、健康ポイント事業では、ウォーキングとの連動のほかに、将来的には健診等の受診や健康に関連したイベントへの参加など、さまざまな健康行動に対してポイントを付与することで、区民が気軽に健康づくりに取り組める環境づくりを行ってまいります。 また、「(仮称)しんじゅく100歳トレーニング」の地域展開にあたっては、新宿いきいき体操サポーターの活動との連携や、介護予防に資する多様な「通いの場」などでの実施も検討するなど、高齢者が身近な場所で地域の人々と交流しながら行えるようにしていきます。 このようなさまざまな事業との連動を通して、区民が健康的な生活を送れるよう施策を推進してまいります。 次に、健康づくりに関する全庁的な取り組みについてのお尋ねです。 御指摘のとおり、健康づくり施策は、現場を最も知っている部署が健康づくりの視点を持って発想することや、関連事業を連動することにより、より実効性の高いものが生み出されてくると考えています。 このことを踏まえ、これまでも「健康づくり庁内推進会議」において全庁的に検討を進めており、まちづくりや地域コミュニティ施策にも健康の視点を取り入れて事業を展開しているところです。 今後、庁内や他自治体の好事例をもとに議論を進め、職員一人ひとりの意識を高めることにより、さらに全庁的な取り組みを推進してまいります。 次に、保健センターと高齢者総合相談センターの管轄区域についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、高齢者の健康づくりと地域包括ケアに関する事業は、密な連携が必要と考えており、保健センターと高齢者総合相談センターの管轄区域を合わせることが望ましいと考えています。 そこで、保健センターでは、今年度より高齢者総合相談センターの各管轄区域ごとにエリアリーダーとなる保健師を定め、地域課題の把握や日常生活圏域会議への出席、健康に関する情報提供等を通じ、高齢者総合相談センターとの連携をより密に図っています。 保健センターの管轄区域については、区民サービスの利便性等を考慮しながら、今後検討してまいります。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第4は、住宅政策について伺います。 新宿区における特定住宅は、中堅所得者層の子育てファミリー世帯を支援することを目的として、15年間に限り供給している住宅であり、空き住戸を解消し、適切な収入を得ていくことが重要です。 区では、これまでも入居促進策を進めており、本年、平成29年4月からは特定住宅の入居要件を一部緩和し、区外からの転入も対象とするとともに、子どもの年齢要件を義務教育終了以前から20歳未満まで引き上げました。また、区外転入者が特定住宅の申し込みをできるようにしたこともあり、区外に向けてより効果的に特定住宅を周知するため、民間の賃貸住宅情報サイトに特定住宅の物件情報の掲載も始められました。 このほか、平成29年6月には、協定を締結している不動産業団体との意見交換会を実施しており、特定住宅の効果的な周知方法などの提案をいただき、改善に取り組まれています。 また、不動産業団体の協力も得ながら入居促進策を推進して、借り上げ型特定住宅の空き住戸を解消し、適切な収入の確保に取り組まれておりますが、空き住戸の解消には、さらなる工夫が必要であると思います。 そこで、まずは特定住宅の今後の入居促進策について、以下質問させていただきます。 渋谷区では、区民住宅から用途を変更した所有型を引き続きファミリー世帯に提供する際、入居促進策として所得制限を月額159万円まで引き上げております。 新宿区としても、この所得制限を引き上げる検討を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。 また、入居の際に必要な手続や費用に対する入居希望者の初期負担感を解消して、区として入居希望者の入居の決断を一押しする手伝いはできないでしょうか。 例えば、特定住宅の入居には連帯保証人や敷金などの費用が必要ですが、連帯保証人の確保や入居時費用の負担などの初期負担感から入居を諦めるケースもあると聞いています。 連帯保証人がいなくても入居することができる仕組みや入居時に必要な敷金などの費用負担のあり方についても見直すことで、入居希望者の初期負担感を解消し、安定的な入居につなげることができると考えます。御所見を伺います。 新宿区住宅マスタープラン(素案)には、区立住宅ストックの有効活用について、「借上型区営住宅は、平成39年度から所有者との契約期間の満了を迎え、住宅の返還を行っていかなければなりません」とあり、さらに「バブル期には地価高騰による定住対策として、区民住宅が中堅所得者層の子育て世帯に供給されてきましたが、民間賃貸住宅の家賃水準はバブル期と比べ大幅に低下し、区内では民間住宅が十分に供給されています。 そこで、中堅所得者層向けの供給については、低所得者層向けの区営住宅の供給のあり方と合わせて検討し、区民の需要に合った区立住宅の全体の再編を図っていくことが必要」と明記されております。 そこで、次に「全体の再編」の中の特定住宅のあり方について、以下質問させていただきます。 区民住宅終了後の住宅の取り扱いについて、所有型につきましては、東京23区のうち14区が行っており、民間に売却し廃止したのが杉並区、用途変更したのが港区、文京区、大田区、世田谷区、渋谷区、荒川区になります。 東京23区のうち、借り上げ型の区民住宅を行っているのは渋谷区と練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区の5区を除く18区になります。この18区中、借り上げ型を廃止、またはオーナーに返還している区は15区です。 このうち、千代田区では、借り上げ型をオーナーに返還し、民民契約に切りかえる際に、使用者を対象とした段階的な家賃補助制度を行っていますが、区としては、このような他区の取り組みについて、どのように考えているのかお聞かせください。 また、「全体の再編」の中の特定住宅のあり方についての御所見も伺います。 次に、用途変更について伺います。 高齢者の居住の安定については、民間賃貸住宅において保証人を見つけるのが困難なことや家賃の支払い、入居中の事故、住宅の使用方法への不安などを理由にした高齢者の入居制限が依然として見られます。 所有型のうち、港区と世田谷区では高齢者専用住宅に用途変更し、大田区では高齢者サロンに用途変更しています。 また、これから家族を形成する若年世帯など、配慮を要する世帯もあります。 先日、我が会派の同僚議員が環境建設委員会の地方都市視察で兵庫県神戸市に行ってまいりました。 神戸市では、新婚世帯や子育て世帯を対象に特別市営住宅の家賃を2割減免しています。これは、新たな入居者だけでなく、既に入居している世帯も対象にして、若年層の流出を防ぎ、定住促進を行っているとのこと。 新婚世帯を対象とした減免制度は例が少ないそうです。婚姻届を出してから3年以内で夫婦同居の世帯や未就学児を扶養する世帯、高校3年生以下の子どもを3人以上扶養する世帯のいずれかで対象になります。 また、本年7月29日に行われた「しんじゅく若者会議」で吉住区長との意見交換の中に「公営住宅をシェアハウスとして提供してみてはどうか」と若者らしい柔軟なアイデアもありました。 新宿区も特定住宅に関して、子育てファミリー世帯だけでなく、幅広い層の方々への用途変更を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。 最後に、ライフステージに応じた居住支援について伺います。 新宿区住宅マスタープラン(素案)では、子育てファミリー世帯に対する居住継続の支援に関して、「子の出生や成長に伴い、より広く良好な環境の住宅への住み替えを要する子育て世帯が区内に住み続けられるよう、経済的支援策について検討する」とされています。 また、さきの決算特別委員会における子育てファミリー世帯の良好な住環境への誘導を目的とした「転入・転居助成」に関する我が会派の質問に対して、「子育て世帯の居住に加え、子育て支援にもつながる総合的な視点での助成のあり方を検討する」との御答弁がありました。 子育てファミリー世帯は、ライフステージに応じて居住形態が変容していきます。また、近年ではダブルケアと言われるように、子育てと介護の両立を迫られる場合もあり、生活環境の変化に対応した「転入・転居助成」には一定の効果があるものと考えますが、いかがでしょうか。区の御所見を伺います。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 住宅政策についてのお尋ねです。 特定住宅の今後の入居促進策についてです。 初めに、特定住宅の所得制限についてのお尋ねです。 特定住宅は、中堅所得者層の子育てファミリー世帯を対象としており、所得制限を世帯全員で月額48万7,000円以下としています。 一方で、子育てファミリー世帯の共働き率の増加に伴い、世帯所得の上昇傾向があり、入居時の所得制限を理由に、新たな希望者や定期使用期間満了後の継続希望者が入居を諦めるケースも出てきています。 こうしたことから、入居希望者の対象拡大を図るため、現在の所得制限の引き上げを検討してまいります。 次に、入居希望者の初期負担感の解消についてのお尋ねです。 特定住宅の入居時には、連帯保証人の選任や住宅使用料の3カ月分の敷金が必要です。こうした入居時に必要な手続や費用について入居希望者の中には負担であると感じる方がいることも承知しています。 こうしたことを踏まえ、連帯保証人にかわるものとして保証会社を利用する家賃等債務保証制度の導入を検討してまいります。この導入に伴い、保証料が生じることから、敷金についても見直しを検討するなど、入居時の負担感の軽減を図ってまいります。 また、特定住宅以外の区立住宅についても、同様な家賃等債務保証制度の導入にあわせた敷金の見直しを検討してまいります。 次に、特定住宅のあり方についてのお尋ねです。 区民住宅終了後の住宅に関する他区の取り組みについてです。 他区では、区民住宅終了の段階で用途変更や廃止、返還等、それぞれの区の事情を踏まえたさまざまな取り組みを進めてきていることは承知しています。 新宿区では、区民住宅について、中堅所得者層の子育てファミリー世帯を引き続き支援するとともに、同一建物にある区営住宅の使用者保護やこれまでに区立住宅制度に御協力をいただいている建物所有者への配慮等から、15年間に限り、特定住宅として活用しています。 特定住宅については、15年間の期間満了をもって終了します。特定住宅終了後の借り上げ型については契約更新を行わず、オーナーへの返還を進めてまいります。また、特定住宅終了後の所有型については、区営住宅の所有形態のあり方とあわせて区立住宅全体の再編の中で検討してまいります。 次に、特定住宅の用途変更についてのお尋ねです。 特定住宅は、中堅所得者層の子育てファミリー世帯を支援することを目的としています。御指摘の幅広い層の方々への用途変更については、今後の特定住宅の入居促進策を進めていく中で研究してまいります。 次に、ライフステージに応じた居住支援についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、子の出生と成長や、子育てと介護の両立などのライフステージに応じて、居住形態は変化していくと考えています。 こうしたことから、子の成長等に伴い住みかえを要する子育てファミリー世帯が区内で住み続けられることや、親世帯と子世帯が近居・同居し、育児や介護、見守りについて互いに支えることは、区民の住まいの安定確保に重要なことと認識しています。 こうしたことは、次期住宅マスタープランで位置づけることを予定しており、現在、具体的な支援策を検討しているところです。 子育てファミリー世帯に対する支援策については、区内で民間賃貸住宅や持ち家等から民間賃貸住宅に住みかえる場合の引っ越し代や、家賃差額に対する助成を検討しています。 また、近居・同居を促進するための支援策については、親世帯または子世帯のいずれかが区内に転入し、近居または同居する場合や、区内に居住する親世帯と子世帯が新たに区内で同居する場合の、引っ越し代や契約に伴う諸経費に対する助成を検討しています。 こうした取り組みにより、誰もが安心して住み続けられる住環境の形成を図ってまいります。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第5は、子育てしやすいまちの実現について伺います。 新宿区は、第一期の新宿区次世代育成支援計画から子育てしやすいまちを実現することを基本目標に掲げ、東京をリードされ、さらに平成31年度までの就学前児童保護者の55%の方々がそう実感していただく数値目標も掲げています。 子育てしやすいまちの実現は、今後の新宿区の安定的な財政運営の基盤となります。その上、新宿自治創造研究所からのデータで、5年後、出生数が人口減少とともに東京全体として縮小していくと予想される推移の中で、これから1年ごとの都市間競争を勝ち抜いていけるかどうか、大きな切り札となる大命題と我が党では位置づけています。 1点目の質問は、待機児童解消に向けた事業内容として、平成29年度に掲げた受け入れ枠拡大の目標681名の進捗状況をお聞かせください。 昨年から本年にかけて“女性の活躍推進法の施行”や“働き方改革”、そして10月には育児休業給付金の延長などによる保育サービスの需要のさらなる増大について懸念しているところです。 企業規模にもよりますが、女性が1年、2年と育児休業を取得しやすい環境が想像を超えたスピードで構築されつつあることも、来年4月入園のお問い合わせを通じて認識を新たにしているところです。 2点目の質問は、平成30年4月に待機児童ゼロになるため全力を尽くすことは当然ですが、来年からスタートする新宿区第一次実行計画期間中の平成31年度、平成32年度の待機児童数ゼロを維持するために新たに提案させていただきます。 ここ数年、担当課の方々が待機児童解消のために、ありとあらゆる手段を駆使し対策を行ってこられましたが、それでもゼロにはなりませんでした。そうしたことを前提に、今まで検討されたことのない用地、具体的には都立や区立の公園内に保育所を設置されることを検討されてはいかがでしょうか。 国家戦略特区特例による都市公園を活用した保育所の整備は、23区内でも荒川区が都立汐入公園内に定員162名の保育所を開設したのを初めとして、都内では7区10所の整備が予定されています。 我が会派の同僚議員も、この荒川区の汐入公園にできた「私立にじの森保育園」を視察してまいりました。やむにやまれぬ状況下で短期間に建設された保育園とは見えないほど地域に開かれた運営をされており、公園利用者や近隣の方々からも御理解をいただいていました。 新宿区として、今後予定される開発地域も視野に入れ、こうした公園内の保育園設置を推進していくべきと考えます。公園内の保育所が新たなファミリー世帯の転入の誘い水になっていることも他区で既に実証されています。区のお考えをお聞かせください。 最後に、新宿区は子育てしやすいまちと言われていますが、いつ何どき発熱などで体調を崩す子どもへの「平日夜間診療」が行われていることも安心して子育てができる大きな支えになっています。ぜひこのような事業は、幼稚園や保育園、児童館など、子どもや保護者が集まる場所でさらなる周知をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 また、子どもは昼間は元気であっても夕方以降、急に熱を出すことが多く、平日の夜間帯に小児科医師に受診してもらえることは心強いのですが、できれば土曜日、日曜日の夜間にも行ってほしいとの御要望もいただいております。 現在は小児科医師が不足しており、実施は厳しい状況にあるかと思いますが、せめて土曜日の夜間だけでも夜間診療室を拡充することはできませんでしょうか、区の御所見を伺います。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 子育てしやすいまちの実現についてのお尋ねです。 初めに、待機児童解消に向けた保育所整備の進捗状況についてです。 区は、子育てしやすいまちの実現に向けて、平成30年4月の待機児童ゼロを目指し、賃貸物件を活用した保育所の整備を中心に定員拡大を図っています。 今年度は、東南で4所、中央で1所、西北で4所の開設を目指しています。このうち、東南の3所と中央の1所、西北の2所は事業者が決定し、5所は平成30年4月に、1所は5月に開設することが決まっています。この整備により474名の定員を拡大します。 公募地域のうち事業者の決まっていない、東南の1所と西北の2所については、事業者からの提案を待つだけでなく、東京都宅地建物取引業協会新宿区支部や全日本不動産協会東京都本部新宿支部に連携協力を求めたほか、公募地域の不動産事業者や町会・自治会に情報提供を呼びかけるなど、保育所を整備できる物件を探しています。 今後も引き続き積極的に保育所の新設に向けて取り組んでまいります。 次に、公園内の保育所設置についてのお尋ねです。 区は、待機児童数が168名と多かった平成27年度、東南地域において公園の活用を検討しましたが、避難経路の確保など保育所設置基準を満たすことが物理的に不可能だったため、実現には至りませんでした。 公園を活用した保育所の整備は、国家戦略特区以外の地域においても、平成29年5月の都市公園法改正により可能となりましたが、公園は地域住民にとって大切な憩いの場であり、その役割があります。今後、待機児童をめぐる状況に大きな変化があるなど、特段の事情が発生したときには、公園利用者や地域の皆様から御意見をいただきながら公園の活用についても柔軟な検討を行っていきます。 次に、平日夜間こども診療室についてのお尋ねです。 平日夜間こども診療室の開設は、安心して子育てができるための支援策として効果的であると考えています。区では、より多くの区民に利用していただけるよう平成28年7月の事業開始時から区ホームページへの掲載や幼稚園、保育園、児童館など関係機関へのポスター配布のほか、区広報でも複数回、案内記事を掲載するなど積極的に周知をしています。今後もさまざまな機会を捉えて、さらに周知に努めてまいります。 土曜日の開設についてですが、事業開始時には小児科医師の確保が困難であるとのことから、平日のみの開設としたところです。区としては、小児科診療所の多くが休診となる土曜日や日曜日の夜間において小児科医師の受診ができる環境を整備していくことは必要であると考えています。 このことを踏まえ、事業の委託先である国立国際医療研究センター病院に土曜日だけでも拡充していただくよう積極的に働きかけ、夜間における小児医療のさらなる充実を図っていきます。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第6は、産後支援の充実についてです。 産後ケア事業として新宿区では、各保健センターと子ども総合センターなどがそれぞれの役割を担ってサポートする体制が整えられています。産後の女性が安心して利用できるように両センターの緊密な連携が不可欠と考えます。 子ども総合センターには、産後、家族等の支援がない家庭に対して職員が一緒に考え、相談者のニーズに応じた子育て支援のサービスをアウトリーチでコーディネートする体制があります。 また、保健センターでは、出産前の妊婦の方が母子健康手帳をもらうために窓口を訪れる際等に「ゆりかご・しんじゅく」の面談や相談等を行っていますので、区が提供する産後支援サービスの内容もそうした機会に周知される必要があります。 もし、子ども総合センターと保健センターとの連携が十分にとれなければ、産後支援サービスの内容が出産前の妊婦の方に伝わらず、産後直後の方が体調が万全とは言えない中、利用できる支援サービスを探そうとして苦労するような状況を招くことになります。 子ども総合センターは保健センターとどのような連携をとっているのか、まず伺います。 2点目は、産後の女性を支援するサービスの充実についてです。 産後に親などの支援がない家庭にとって、行政の支援は不可欠です。産前産後に利用できる各サービスには、それぞれ長所・短所があります。 新宿区が行っている産後支援は、授乳や沐浴など育児に関することや日常的な家事一般、保育園などへの送迎もできます。しかし、利用時間が沐浴のみなら時間が余ってしまうデメリットがあります。予約も1週間前までで毎回シッターがかわり、その都度、掃除機などがある場所を説明する必要があります。 シルバー人材センターの家事援助・育児支援サービスは、産前も産後も利用でき、家事一般や年齢制限つきで保育園への送迎もできます。しかし、沐浴ができないことやシルバー人材センターの会員と利用者のマッチングも必要です。 産後ドゥーラは、家事や育児などの研修を受け、子育てが軌道に乗るまで日常生活を支える専門家ですが、1時間当たり2,000円から3,000円と費用が高額になり、新宿区には助成制度がないので利用しにくい面があります。しかし、家庭の状況に合わせて必要なときに訪問してくださるなど、融通がきく利点もあります。 このように、それぞれ制度にはサービス内容に長所・短所があります。したがって、区が行っている産後支援に他のサービスの長所を取り入れ、利用しやすいように工夫や改善が必要と考えますが、この点についてどうお考えなのか伺います。 3点目は、産後支援サービスの質の向上についてです。 産後支援は利用しやすい仕組みの改善とともに、サービスの質の向上が必要です。産後、母体は想像を絶するほど身も心も極限状態になっています。それだけに一層出産後は手厚いケアが必要です。 先日、産後ドゥーラに話を伺う機会がありました。日中、母子だけになる第2子を出産直後のママがさまざまなストレスでパニック状態になり、3歳になる上の男の子が部屋の中を元気よく遊び回るのを制止するため、頭ごなしにどなることを繰り返していたそうです。そうした状況を見た産後ドゥーラが上の男の子に「赤ちゃんかわいいね。お名前は何て言うの」と尋ねると、男の子は「知らない」と言ったそうです。この子は、赤ちゃんの名前を知っているのに「知らない」と言っている。産後ドゥーラは、上のお兄ちゃんの心のケアが必要と判断し、外で1時間、思いっきり遊ばせたそうです。すると、すっきりとしてその子もお母さんも笑顔になった話をされていました。 今、社会状況が昔と比べて変化し、家族や親戚のサポートを得ることが難しい時代になっています。産後は、母親も子どももストレスがいっぱいです。励ましや心理的なサポートも大切です。そのことが早い段階から産後鬱や児童虐待の芽を摘むことになります。ただ、産後支援のための家事や育児に対して型どおりの支援をすれば済む問題ではないと思います。産後直後のデリケートな精神状態にある女性を支える視点を十分にくみした産後支援の質の向上を図らなくてはならないと考えます。この点を強く要望しますが、区としてどうお考えなのか、お聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎区長(吉住健一) 産後支援の充実についてのお尋ねです。 初めに、子ども総合センターと保健センターとの産後支援の連携についてです。 区では、妊娠届が提出された際、出産前の健診等の案内だけでなく、産後すぐに利用できる育児支援家庭訪問のチラシや、年齢別のサービスが一目でわかる「はっぴー子育てガイド」を「母と子の保健バッグ」に入れてお渡ししています。 出産・子育て応援事業ゆりかご・しんじゅくの面談の際には、このバッグから、その方の状況に合わせたサービスを紹介するとともに、支援が必要と判断した妊婦については、保健センターが子ども総合センターへ連絡する仕組みとなっています。 また、子ども総合センターと保健センターとの情報交換の場を設け、新規事業等、保護者へ提供する情報に漏れがないようにしています。 今後も子ども総合センターと保健センターが緊密に連携し、全ての妊婦が安心して妊娠期を過ごせ、出産、子育てが行えるよう、切れ目のない支援を充実していきます。 次に、産後の女性を支援するサービスの充実とサービスの質の向上についてのお尋ねです。 産後は、身体的にも、精神的にも負担が増す時期であり、心理的なサポートも大変重要です。産後の支援を行う育児支援家庭訪問では、保育士や経験豊かなヘルパー等を派遣し、家事援助にとどまらず、育児支援やきょうだいへの対応も行っています。その中で継続的な支援が必要と判断されたときは子ども総合センターに連絡し、個別の支援につなげています。 また、特定のヘルパー派遣や急な利用についての御要望は、日時などの調整も含め、できるだけ対応していますが、今後もお伺いするよう努めていきます。加えて、利用時間についても幅広い選択ができるよう見直しを図っていきます。 今後も産後鬱や児童虐待を防止する視点をしっかり持ち、産後支援の質の向上を図ってまいります。 ◆1番(豊島あつし) 質問の第7は、新宿が目指すこれからの教育について伺います。 本年3月に約10年ぶりとなる教育指導要領の改訂が行われ、幼稚園では2018年度、小学校が2020年度、中学校が2021年度から実施となり、戦後最大規模の教育改革が始まります。 事の発端は、世界の大学ランキングを見ればわかるとおり、アジアでは中国やマレーシア等の大学が台頭を示す中で、現在の日本の大学はグローバル化に対応できず、世界における大学間競争に大きくおくれをとっています。それは、やがて日本の国際競争力に必ずはね返ってくることを鑑み、国は抜本的な教育改革へと踏み出しました。 また、今日まで「生きる力」を育むべく、学習指導要領の見直しが幾度も図られてきましたが、本来、密接に関係し合う高等学校・大学による一体的な改革は進んできませんでした。 そこで、高等学校教育と大学教育、そして高等学校から大学への入り口となる大学入学者選抜においても一貫した取り組みが必要であることから高大接続改革と名づけられ、喫緊の課題として頻出するようになりました。 文部科学省、初等中等教育局教育課程課、大杉住子企画室長は、このたびの新指導要領の改訂前に行われた取材で、「象徴的なのは人工知能です。現在学校で教えていることは、人工知能が進歩した社会では役に立たないかもしれません。急激な変化の中では、より主体的に情報をつかむ力を育まなければいけない。アクティブ・ラーニングはそのために必要です。今やっている探求型の授業をより高めていくことが小・中学校で求められています。高校では、そもそも探求型の授業を実施していない学校もあるので、まずそういう授業をやってくださいと。高大接続の議論も同時に進んでいます。これまでは「入試が変わらないと高校が変わらない。高校が変わらないと……」という鶏と卵の議論でしたが、今回は「一緒に変えよう」という流れができています」と改訂の狙いについて、このように述べています。 そこで、1点目の質問ですが、このように、国は戦後最大規模となる大教育改革を始めました。そして、現在の中学3年生が大学受験の際には、テストの点数だけではなく、面接やポートフォリオなどによって総合的に評価する新しい大学入試が開始しますが、このような大教育改革を教育委員会はどのように受けとめているのか。また、どのようなスケジュールで新学習指導要領に対応していくのか。教員の反応や課題も含め、具体的にお聞かせください。 次に、文部科学省は、このたびの新学習指導要領で第4次産業革命時代を見据え、予測不能な変化に対して柔軟に対応できる「生き抜く力」を育むために、「主体的・対話的で深い学び」、いわゆるアクティブ・ラーニングの実現を大きなテーマに掲げています。また、「生き抜く力を育む」という理念の具体化には、「生きて働く“知識・技能”の習得」「未知の状況にも対応できる“思考力・判断力・表現力等”の育成」「学びを人生や社会に活かそうとする“学びに向かう力・人間性”の育成」の3本の柱を偏りなく実現することとしています。 そこで2点目の質問ですが、日本の学校教育は知識詰め込み型で、評価は主に知識の量で行われてきました。大学入試も知識量が勝負になるので、どうしても公教育も、授業は一方的な知識伝達型講義になるという悪循環からの脱却がこのたびの大教育改革です。しかし、この改革を進めるかなめは、「主体的・対話的で深い学び」の実現ですが、教員が小手先の手法だけにとらわれれば大失敗になることが考えられます。ですから、どこまでいっても教員の意識改革とスキルアップが大前提となる改革であることは言うまでもありません。 そして、一番の問題は、教員が授業の準備や研修、または情報共有にかける時間の確保ができないほどの多忙の解消を、予算編成権を持つ区と管理責任者の教育委員会が担保できていないことだと私は考えます。 国も「教員の働き方改革」に本腰を入れる兆しが見えますが、教育委員会としては、すぐにでも取り組むことが重要と考えます。 そこで伺いますが、今後どのようなスケジュールで、教員の業務改善に取り組むお考えなのか、また、全教員の勤務時間を把握するためにはタイムレコーダーの導入など、具体的な対応策を至急取りまとめていくことが必要だと考えます。教育委員会の御所見をお聞かせください。 また、先月、区内の全教員が集まって行われた「対話的・主体的で深い学び」を研究主題とする教育課題研究校の発表は、どのような成果があったのか。教員の反応や今後の課題と対策についてもあわせてお聞かせください。 次に、新宿区第一次実行計画(素案)では、地域協働学校の充実として、「全ての区立小・中学校が地域協働学校となり、学校と地域とが連携・協働して子どもたちの成長に関わり、開かれた学校づくりをさらに推進していきます。 また、小中連携型地域協働学校を実施することで、地域ぐるみで子どもの一貫した成長を支え、互いの顔が見える関係が強化されることとなり、今後の地域社会を担う人材の育成へとつなげます。 小中連携型地域協働学校の本格実施に向けて、平成30年度から、学校運営協議会と地域との連絡会及び連携型地域協働学校をモデル実施します」とありますが、ここ10年は私立中学に進学する生徒が増加する傾向を鑑みると、この試みは必ず結果を伴う施策であると確信いたします。 具体的には、多様な価値観の子どもたちが集い、学び合えることができ、郷土愛を育み、多様性を受け入れる人格を形成する土壌は、外国にルーツを持つ子どもたちをはじめ、多様な人々が生活するまちである我が新宿区の公立学校のほうが私立よりもはるかにすぐれています。 また、これからのAI時代で活躍できる人材も多様性に対応でき、多角的に思考できる人格であり、新学習指導要領の狙いも、まさにこの点にあると考えます。 そこで、3点目の質問ですが、平成30年度は小中連携型地域協働学校モデル校の実施を1地区としています。先行実施となる1地区でさまざまな人的・物的資源の確保や施策の検証等に一定の期間を要することは当然であり理解できますが、新指導要領の全面実施も小学校では平成32年度から始まることを踏まえると、モデル地区以外でも地域と十分に話し合いながら積極的に事業を展開していただきたいと考えます。この点について、教育委員会の御所見をお聞かせください。 また、今年度、区内の全学校が地域協働学校となったのですから、カリキュラムに支障を来さない範囲で小学校高学年には地元中学の授業や部活の見学・参加なども行えると相乗効果があると考えますが、この点もあわせてお聞かせください。 以上、御答弁願います。 ◎教育長(酒井敏男) 新宿が目指すこれからの教育についてのお尋ねです。 初めに、教育改革に対する教育委員会の受けとめについてです。 大学入学者選抜の改革を含む高大接続改革や学習指導要領の改訂を含む教育改革については、変化の激しい時代において新たな価値を創造する力を育成することをともに目指しており、新宿区教育委員会としても共通の認識に立って取り組まなければならないと受けとめています。 特に所管する小・中学校の教育改革については、これまでの「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の取り組みを推進していくこと、教育活動の質を向上させ、学習効果の最大化を図るカリキュラム・マネジメントに努めること、小学校における外国語教育の充実などが課題となっていると認識しています。 次に、新学習指導要領への対応についてです。 教育委員会では、本年8月に文部科学省が行った学習指導要領の改訂についての地方説明会などを受け、12月の校園長会をはじめとして、平成30年度の教育課程編成のための説明会や教員の研修会などを活用し、学習指導要領の改訂の趣旨や教科の移行の内容について確実に周知していく予定です。 今後も、毎年度の異動により教職員が入れかわることから、新学習指導要領の移行の内容や新宿区における取り組みの方向性などについては定期的に周知していくとともに、新学習指導要領への円滑な実施に向けた取り組みの充実を図ってまいります。 次に、新学習指導要領への教員の反応や課題についてです。 教育委員会では、今回の改訂で注目される「小学校における外国語教育の充実」について、既に教育課題モデル校を指定し、中学年・高学年担当の教員だけでなく、全ての教員が「誰でもできる」をテーマに研究を進めています。 教員からは、「英語の指導は不安だが、ぜひ指導力を高めたい」「子どもたちと英語でコミュニケーションが図れるようになりたい」という声もあり、小学校教員の外国語教育への指導力を高めることが課題です。 今後は、外国人英語教育指導員(ALT)の派遣に加え、教育委員会が実施するデジタル教材等を活用した外国語教育の指導力向上のための研修会や校内のOJTなどを活用し、小学校における外国語教育の充実を図ってまいります。 次に、教員の業務改善の取り組みのスケジュールと全教員の勤務時間を把握する具体的な対応策についてのお尋ねです。 教員の業務改善は、教育委員会として対応を進めなければならない喫緊の課題だと認識しています。 教育委員会では、事務局職員と学校の代表で構成するプロジェクトチームを設置し、「勤務環境の改善に向けた具体的な取り組み」、「教員の意識改革」、「取り組みの実効性を担保する仕組みづくり」、といった視点から検討を進めていくことを考えています。 今後のスケジュールとしては、教育ビジョンに掲げる「部活動を支える環境の整備」や「学校の法律相談体制の整備」に加え、今後対応していく具体的な内容を今年度中に取りまとめ、対応可能なものから順次実施に移し、教員の業務改善に取り組んでまいります。 御指摘のとおり、教員の業務改善の取り組みを進めていくためには、教員一人ひとりの具体的な勤務時間を把握する仕組みを整えることが必要となります。中央教育審議会の緊急提言では、ICTやタイムカードなど客観的に勤務時間を把握する仕組みについて構築するよう努めることが示されています。 こうした状況を踏まえ、プロジェクトチームでは、タイムレコーダーの導入など、教員個人の勤務時間を効率的・客観的に把握する仕組みについて、学校の声を聞きながら検討を進めてまいります。 次に、教育課題研究校発表会の成果と教員の反応、今後の課題と対応についてのお尋ねです。 「質の高い学び」を実現するための具体的な学習指導については、特定の方法に限定するのではなく、子どもたちの発達の段階や教科の特性等に応じて適切な方法を選択していくことが重要です。 本年10月に行った教育課題研究校発表会では、「主体的・対話的で深い学び」の実現のための授業改善として、課題意識の持たせ方や対話的な学習活動の推進、教科横断的な視点を意識した学習計画などの成果を参加者と共有しました。 参加者に対して行ったアンケートでは、「子どもたちが自分の課題として捉え、友達と考えを出し合いながら深い学びへとつなげていく手法がよくわかった」「自分の考えを整理し、考えを共有するための手だてとしての“思考ツール”を自校でも活用していきたい」など肯定的評価が9割を超え、教員の意識を高めることができました。 今後は、こうした教育課題研究校の研究成果を踏まえ、9月から全校に導入したタブレットパソコンを活用して、子どもたちが考えを整理したり、共有したりする手だてを研究することが課題です。そのため、新たな教育課題研究校を指定してICTの活用方法などの研究を進めており、さらに「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた取り組みを推進してまいります。 次に、小中連携型地域協働学校モデル校の実施についてのお尋ねです。 小中連携型地域協働学校では、地区内の小・中学校の運営協議会が地域で育てたい子ども像を共有し、連携して活動を行うことにより、地域ぐるみで子どもの一貫した成長を支えるとともに、互いに顔が見える関係を強化することを目的としています。 平成30年度については初年度であることから、取り組みの成果や課題を検証し、事業モデルを構築するために1地区で実施することを計画しています。 モデル地区以外の地区への事業展開については、現在も各小・中学校の運営協議会が自主的に連携して活動している事例もあることから、これらの学校や地域と十分に話し合うとともに、モデル地区における成果を踏まえながら着実に進めていきたいと考えています。 次に、小学校高学年による地元中学校の授業や部活動の見学などについてです。 御指摘のとおり、小学生が中学校を見学し、授業や部活動の状況をはじめ、学校の魅力について知ることは、地域への愛着を育むとともに、中1ギャップの解消にも効果的であると考えています。 現在、小学校と中学校が連携し、6年生が中学校の授業を見学している事例があるほか、地域協働学校運営協議会の支援により、小学生のクラブ活動が中学生の部活動と合同で活動している事例などがあります。 今後は、このような事例を各小・中学校の地域協働学校運営協議会に紹介するとともに、小中連携型地域協働学校の取り組みの中で、地域と十分に話し合いながら見学会の実施や小学校と中学校のより効果的な連携方法などについて検討していきます。 以上で答弁を終わります。 ◆1番(豊島あつし) ただいまは、我が会派の代表質問に対して区長並びに教育委員会より御丁寧な答弁をいただき、まことにありがとうございました。 以上をもちまして、我が会派の代表質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(佐原たけし) ここで、議事進行の都合により休憩します。 △休憩 午後2時51分--------------------------------------- △再開 午後3時09分 ○議長(佐原たけし) ただいまから、会議を再開します。 質問を続行します。 19番あざみ民栄議員。     〔19番 あざみ民栄議員登壇、拍手〕 ◆19番(あざみ民栄) 日本共産党新宿区議会議員団のあざみ民栄です。2017年第4回定例会に当たり、会派を代表して区長並びに教育委員会に質問します。 10月22日投開票で総選挙が行われ、与党が3分の2以上の議席を占める結果となりました。日本共産党は、残念ながら、議席後退となりましたが、市民と野党の共闘勢力は前進しました。東京1区では、統一候補が勝利しました。この結果は、安全保障法制の廃止と安倍政権のもとでの9条改定反対、森友・加計疑惑の徹底追及等が国民の願いであることのあらわれです。 先日、会計検査院が森友学園の国有地売却値引きについて、国がごみ量を過大に算定した可能性を示し、安倍政権の責任が厳しく問われています。     〔「そうだ」と呼ぶ者あり〕 日本共産党は、市民と野党の共闘を発展させ、安倍暴走政治をストップさせるため頑張る決意を申し上げ、質問に入ります。 初めに、次期総合計画等について質問します。 新宿区基本計画(素案)と新宿区まちづくり長期計画(素案)に対するパブリック・コメントが8月25日から9月25日まで実施され、10カ所の地域説明会が行われました。区は、この結果等を踏まえて総合計画(案)を決定し、今定例会に「新宿区総合計画の基本的な事項」の議案を上程しています。趣旨を計画に反映した意見は基本計画22件、まちづくり長期計画は73件ありましたが、素案からの基本的な考え方は大きくは変わらず、地域自治や人権尊重、子どもの貧困を含む格差と貧困の解消、高齢化への対応などは、やはり不十分であり、重ねて検討を求めるものです。 また、総合計画等を上位計画とする実行計画及び個別計画の策定が進められていますが、大もとの総合計画(案)に区民要求を充分に取り入れることが実行計画や個別計画を充実させることにつながるのですから、その点でも総合計画(案)の改善が求められます。 ここでは、以下3点に絞って伺います。 第1に、学童クラブの充実についてです。 学童クラブ事業は、本来認可保育園と同様に家庭にかわる子育て施設として法律に基づいて運営される施設です。しかし、現在、新宿区は、年々高まる学童クラブニーズに対し、まともな定員拡大も行わず、代替としてひろばプラスの拡大という小手先の対応に終始しています。基本計画(案)には、「子どもの居場所づくり」の中で放課後子どもひろばと同列に扱われています。そのため、第一次実行計画(素案)には増設計画も定員拡大の目標さえありません。基本計画(骨子案)に対するパブリック・コメントでは、学童クラブの増設について26件もの要望が寄せられ、基本構想審議会でも議論になりました。 新宿区学童保育連絡協議会がことし行ったアンケートでは、「区に求めたいこと」の上位に「4年生以上の待機児解消」、「学童クラブの新設、増設」があがっています。定員オーバー率が高まっていた西落合学童クラブでは、今年度落合第三小学校と落合第六小学校にひろばプラスができましたが、オーバー状態は変わらず、保護者などからは何とかしてほしいと声が上がっているとのことです。多くの保護者が望んでいる学童クラブそのものをふやしてほしいという願いを区長はどのように受けとめておられますか。 基本計画の個別施策「安心できる子育て環境の整備」に「学童クラブの充実」の項目を起こし、「学童クラブの定員拡大、増設」を盛り込むことを改めて求めますが、いかがですか。 第2に、住宅施策についてです。 現行の住宅マスタープランの設定目標に「最低居住面積水準未満の住宅の割合を減らす」という目標がありますが、減らすどころか2003年の11%が2013年は24.6%となっており、大きく後退しています。こうした状況について区長はどう思われますか、お答えください。 区民意識調査では、「新宿区から転居したい」理由の1位は「家賃・地代が高いから」であり、広いところに住みたくても区内の家賃相場では水準未満の住宅しか借りられない現状が浮き彫りになっています。高齢者や障害者の計画策定のための調査でも、住宅確保の要求は非常に高くなっています。しかし、次期住宅マスタープラン(素案)--以下「住マス素案」と言う--は、住みかえ相談や保証会社等をあっせんし、家賃等債務保証料を助成するなど、これまでの延長線上の取り組みにとどまっています。 都市マスタープランのパブリック・コメントでは、「住みかえ相談を利用したが物件はなかった。オーナーが障害者や高齢者等の入居制限をしているので、相談だけでは問題は解決しない」と厳しい御意見もありました。 実際、昨年度の住みかえ相談件数306件に対し、成約数は19件のみでした。住マス素案には「住みかえ相談によるサポート体制の強化」とありますが、どのように改善されるのでしょうかお答えください。 私たちが再三政策的活用を求め、区長も税金の無駄遣いとお認めになった特定住宅の空き室問題についても、住マス素案には何ら触れられていません。 先日、以前区民住宅に住んでいたひとり親家庭の方から、「特定住宅になり家賃が上がって払い切れないので転居したが、その後特定住宅は空き室だらけと聞いて頭にきている。空いているなら、少し家賃を下げて困っている人に貸せばいいのに」という怒りの御意見をいただきました。 区立住宅として確保している住宅を空き室にし、税金を垂れ流し続けるのは、高い家賃を払っても新宿区に住み続けたいと願う区民に対する背信行為であり、到底許されません。     〔「そうだ」と呼ぶ者あり〕 早急に特定住宅の住宅確保困難な区民に対する新たな活用について検討し、実施することを求めますが、いかがですか。 また、基本計画と都市マスタープランそれぞれに住宅施策の充実として区営住宅の増設、家賃補助の充実を盛り込むことを改めて求めますが、いかがですか。 第3に、LGBT等性的指向・性自認により困難を抱える区民への支援についてです。 私は、さきの決算特別委員会の総括質疑でも取り上げましたが、人権・多様性の尊重の一環として、こうした皆さんへの支援や連携が新宿区に求められていると考えますが、基本計画(案)は素案と変わらず、個別施策「女性や若者が活躍できる地域づくりの推進」の中の「男女共同参画の推進と多様な生き方を認め合う社会づくり」に潜り込んでいる状態です。これでは、新宿区が力強く取り組むという姿勢は感じられません。 一方、第三次男女共同参画推進計画(素案)では、事業として性自認や性的指向等についての意識啓発、相談窓口の周知、NPO等との連携による支援の充実が具体的に盛り込まれました。個別計画が積極的な取り組みを行うとしているのですから、基本計画にはせめて「施策の方向性」として「LGBT等性的指向・性自認により困難を抱える区民への相互理解と権利擁護」といった項目出しをすべきと考えますが、いかがでしょうか。 以上、答弁を求めます。 ◎区長(吉住健一) あざみ議員の御質問にお答えします。 次期総合計画等についてのお尋ねです。 初めに、学童クラブの充実についてです。 学童クラブは、保護者にかわって子どもを保護・育成する機能を持っています。「ひろばプラス」は、学校施設を活用し、遊びと学びの支援を行う放課後子どもひろばの特徴を活かしながら、おやつや出欠管理、連絡帳等、学童クラブで行っている保護機能を付加した事業で、両事業とも利用者アンケートで高い評価を得ています。 基本計画の施策の方向性では学童クラブの充実を図るとしており、多様化する家庭環境や子どもの成長段階に合わせて放課後の居場所が選択できるよう、総合的に推進してまいります。 今年度は、地域の学童クラブ需要を踏まえ、北山伏学童クラブの定員を20名拡大いたしました。 今後も定員を大きく上回る学童クラブについては、児童館スペースの活用による専用スペースの拡大や教育委員会との協議により新たなスペースを確保するなど対応してまいります。 次に、住宅施策についてのお尋ねです。 最低居住面積水準未満の住宅の割合についてです。 居住面積水準は世帯人数に応じた床面積で、健康で文化的な居住環境の質をあらわす重要な指標です。これまで世帯人数の変化等、ライフステージに応じた住みかえの支援として、子育てファミリー世帯を対象に転居助成を実施するとともに、良好な居住環境を目的とする新宿区ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例や長期優良住宅認定制度により最低居住面積水準以上の住宅の供給を誘導してきました。 しかしながら、新宿区での利便性を優先した居住の選択や世帯人数の変化等により、御指摘のとおり、最低居住面積水準未満の住宅に住む世帯の割合が平成15年の11%から平成25年の24.6%と、10年間で13.6ポイント増加しています。 このため、ライフステージの変化に伴う住みかえの支援策として、従来の施策に加え、不動産取引や民間賃貸住宅に関する情報提供、相談体制の充実を図ることにより、良好な居住環境の向上を目指してまいります。 次に、住みかえ相談についてのお尋ねです。 住みかえ相談は、高齢者や障害者など住宅を探すことが困難な方に民間賃貸住宅をあっせんする制度です。高齢者等が円滑に住みかえ相談から入居に至るためには、相談者の希望にかなう物件が見つけやすく、オーナーも安心して貸し出せることが大切です。 このため、住みかえ相談において、住み替え促進協力店からの物件を紹介することにあわせて、オーナーが安心して貸し出しできるよう家賃等債務保証料助成を実施しています。 本年10月からは、希望にかなった物件がより多く見つかるよう、国が指定した不動産流通機構の検索サイトや多くの不動産会社が活用している不動産流通推進センターの検索サイトを活用し、相談者に紹介しています。 今後は、家賃等債務保証料助成について、保証会社や保証内容等の拡充を検討してまいります。また、オーナーに対し、高齢者等の入居の機会の確保について不動産業団体と連携し、さまざまな機会を捉えて啓発を行ってまいります。 次に、特定住宅の新たな活用についてのお尋ねです。 特定住宅は、中堅所得者層の子育てファミリー世帯を支援することを目的としていますが、現在、空き住戸が生じ、特定住宅の設置目的を十分に果たしていない状況にあります。これまで区内在住要件や子どもの年齢要件を緩和するとともに、民間の賃貸住宅情報サイトを活用した物件情報を発信するなど、入居促進策を進めてきました。 今後は、新たな入居促進策として子育てファミリー世帯の共働き率の増加に伴い、世帯所得の上昇傾向があることから、入居希望者の対象拡大を図るため、現在の所得制限の引き上げを検討してまいります。 また、入居時に必要な連帯保証人の選任や敷金に負担感を感じる方もいます。入居時の負担感を軽減するため、連帯保証人にかわるものとして、保証会社を利用する家賃等債務保証制度の導入を検討します。この導入に伴い保証料が生じることから、敷金についても見直しを検討してまいります。 こうした入所促進策を進めることで、特定住宅の空き住戸の解消に取り組んでまいります。 次に、区営住宅の増設と家賃補助の充実についてのお尋ねです。 区営住宅については、総戸数や世帯数に対する割合が特別区の中でも上位にあり、今ある区営住宅を有効に活用してまいります。 また、家賃補助については、区内で安心して住み続けられるように子育てファミリー世帯等を支援する「民間賃貸住宅家賃助成」を実施しているほか、立ち退きを求められた高齢者等を支援する「住み替え居住継続支援」を実施しています。このため、区営住宅の増設と家賃補助の充実を基本計画と都市マスタープランに盛り込むことは考えていません。 次に、基本計画の施策の方向性に「LGBT等性的指向・性自認により困難を抱える区民への相互理解と権利擁護」といった項目出しをすべきとのお尋ねです。 基本計画の施策の方向性では、「性には多様性があることを認め合い、理解不足や偏見による差別を解消させるよう人権教育や啓発活動の促進に努めるとともに、当事者が安心して悩みごとを相談できる体制の充実を図っていきます」としています。 性の多様性への理解・啓発を推進し、当事者や御家族等の関係者が安心して相談できる体制を充実させていくことで、御意見の主旨に沿った施策が推進されるものと考えています。 現在策定中の第三次男女共同参画推進計画は、基本計画の個別施策である「女性や若者が活躍できる地域づくりの推進」の実現を目指した分野別計画であり、そのビジョン及び視点は、個別施策の目指すまちの姿・状態から設定したものです。 ◆19番(あざみ民栄) 次に、民泊について質問します。 全国初の条例化で注目を集めている「新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例案」--以下「条例案」と言う--が今定例会に提出されました。 質問の第1は、条例案第11条「住宅宿泊事業の実施の制限」についてです。 条例案では、区内面積の34%を占める住居専用地域では、月曜日正午から金曜日正午まで住宅宿泊事業をすることができない、つまり、週末のみ営業可能との制限をかけ、それ以外の地域は制限がありません。 区長は、10月12日の民泊問題対応検討会で、厳し過ぎるルール設定、あるいは合理的な説明のつかない規制によって無届けの違法民泊が潜在化していくことを防いでいかなければならないと述べています。 新宿区と同様に違法民泊に悩まされてきた京都市は、観光閑散期の1月・2月のみ住居専用地域で営業可能とし、それ以外の地域は今後検討するようです。 パブリック・コメントでは、区から住居専用地域での禁止ができないと説明されたが、国に確認したら、ゼロ日制限が可能と言われた、騒音等で困っており、できれば禁止してほしい等々の意見が寄せられています。 昨年から国家戦略特区制度を活用して一定地域で民泊を許可してきた大田区は、区の面積の27%を占める住居専用地域、工業専用地域、工業地域で民泊を全面禁止する内容の条例案を第4回定例会に提出予定とのことです。新宿区でも区民の住環境を守るために住居専用地域は全面禁止にすべきです。また、マンションが多い商業・近隣商業地域や駅に近い第一種・第二種居住地域は、民泊が多数存在すると考えられます。この地域にも区民は多数居住しており、一定の日数制限が必要だと考えますが、いかがですか。 質問の第2は、条例案第13条「建物又は土地の提供者等の責務」についてです。第13条は、建物や土地を提供する者は、その建物や土地で住宅宿泊事業を行っていいかどうかを賃貸借契約書に記載するように努めることを求めています。この点につき、検討会では、都庁の不動産業課が賃貸借契約の条文の記載方法を、民泊の内容を入れるように義務づけるということを1度指導してもらえば、賃貸借契約書の大概が変わるという趣旨の発言がありました。東京都に協力を求めるとともに、区としても土地・建物賃貸借契約書のひな形や書式を独自に作成して不動産業界に活用を促してはいかがでしょうか。 質問の第3は、人員体制についてです。 条例案では、第13条の建物・土地提供者の責務である賃貸借契約やマンションでの民泊事業の可否を規約等に記載する努力義務は条例公布の日から、民泊の届け出事務は来年3月15日から施行されます。体制の強化を急がなくてはいけません。 先日、福祉健康委員会が視察した京都市は、20人の職員体制で臨み、昨年実態調査を行い、それでも不明な施設についてはJTB西日本に委託をして調査し、仲介事業者にも聞き取りを行い、実態の解明を急いでいます。 新宿区は、4,000を超すと言われる民泊の実態把握ができておらず、これでは条例が施行されても、届け出したものは受け付けるが、そうでないものの指導ができないのではありませんか。条例に基づいた指導を徹底できるように、施行前に実態把握が必要です。来年度の組織改編待ちにせず、健康部、都市計画部、環境清掃部、消防署、警察署など検討会に参加した機関の連絡体制を構築し、今から必要な人員を配置すべきではないでしょうか。 また、事業者の相談、宿泊者や近隣の苦情や相談を受け付ける窓口設置が必要ですが、条例案は住居専用地域で区役所が閉庁している土日の営業を認めており、実態に即して夜間・土日に起こる問題にも対処できる体制を整備する必要があると考えますが、どのように準備されているのか伺います。 質問の第4に、予算の措置についてです。 住宅宿泊事業法の実施に伴い、区には多大な事務負担が生じます。第3回定例会では、職員増員や労働者派遣、外部委託等を検討すると答弁されましたが、いずれにしても適正に事業を遂行するための予算はきちんと確保しなければなりません。国や都から補助金等はあるのでしょうか。少なくとも都区財政調整で算定するよう求めるべきと考えますが、いかがですか。 また、法定外目的税についても検討すべきと思いますが、いかがですか。 以上、答弁を求めます。 ◎区長(吉住健一) 民泊についてのお尋ねです。 初めに、住宅宿泊事業の実施の制限についてです。 住宅宿泊事業について、区域を定めて実施期間を制限することに関しては、国土交通省が実施可能日を「ゼロ日」として全面禁止区域を設けることは、法で想定していないと説明しています。 区としては、生活環境の悪化の防止のためには一定の制限が必要と考えますが、規制強化により無届け出のケースが増加をすることを危惧しています。 これらを考慮し、全面禁止の区域を設けるのではなく、都市計画法で良好な住居の環境を保護するために定められている住居専用地域について期間制限をすることとしました。 また、商業地域、近隣商業地域及び住居地域は、旅館業法の許可を取得して営業が可能な地域です。そのため、住宅宿泊事業の制限を行うのではなく、今回の条例により、ルールにのっとった住宅宿泊事業の適正な運営の確保を図っていきます。 次に、建物又は土地の提供者等の責務についてのお尋ねです。 住宅宿泊事業法に基づく届け出の際、その住宅の所有者等が賃貸を行うにあたり、事業を行う旨の承諾をしていることも届け出事項として法令で定められており、区はその書類確認も行います。 このことから、条例案では、他人に建物、または土地を提供する場合、賃貸借契約の締結の際に、住宅宿泊事業の実施の可否について明記することを努力義務として定めました。 一方、当事者間で取り交わす不動産の賃貸借契約は取り決め事項が多様であるため、賃貸借契約書のひな形や書式を区で独自に作成することは困難と考えます。 このため、国土交通省が作成している「賃貸住宅標準契約書」の内容に住宅宿泊事業の実施の可否に関する事項が示された場合は、国や東京都の所管部署、区内の不動産業関係団体と情報共有し、区民に対して内容の周知を行っていきます。 次に、人員体制についてのお尋ねです。 初めに、民泊の実態把握についてです。 京都市では、平成27年度に民泊の実態調査を行いましたが、現在は行政指導が強化されたこともあり、該当物件のサイトによる場所の特定がほとんどできない状況と伺っています。 区の苦情件数は平成27年度から年々増加し、10月末で延べ601件となりましたが、最近は職員が何度現地を調査しても営業者側が連絡を絶つケースが見られ、委託調査を行っても把握は困難と思われます。 区は、今回の条例制定及び来年6月15日の法施行に向け、区民、事業者、宿泊者へ、わかりやすいリーフレットやルールブックを作成・配布し、制度の周知を図るとともに届け出の促進に努めます。 一方、違法民泊に関しては多くの苦情や相談があり、旅館業法違反として指導監督していますが、住宅宿泊事業の届け出住宅についても現地確認及び指導監督等の事務が発生します。これらの対応を適切に行い、違法民泊の潜在化を防ぐためにも、民泊対応の窓口となる健康部衛生課の職員体制等の充実が必要と考えています。 さらに、旅館業法の改正が今後予定されており、無届け民泊に対して立入検査等の創設や罰則規定の強化がなされることから、警察等関係機関と、より緊密に連携して対応していきます。 次に、苦情・相談受付窓口については、国が設置するコールセンターの機能も活用し、担当部署で地域の現地指導につなげる体制整備を行います。 夜間や土曜日・日曜日に問題が起きた場合の体制についてですが、住宅宿泊事業者は周辺住民からの苦情等に適切かつ迅速に対応することが義務づけられています。届け出住宅には標識の掲示も規定されており、さらに条例案で所在地、連絡先などを公表することとしており、今後、区ホームページ等で閲覧できるようにする予定です。 このように、住宅宿泊事業者が夜間や土曜日・日曜日にも適切に苦情等に対応できる体制を整えるほか、無届け民泊については、警察等関係機関と連携して適切な対応をしていきます。 次に、予算の措置についてのお尋ねです。 初めに、国や都からの補助金等についてですが、現在、国や都から補助金の交付についての見解は示されていません。 また、法定外目的税の徴収については、区が独自に徴収することは考えていませんが、引き続き都の検討状況を注視していきます。 なお、区が住宅宿泊事業法を適正に運営していくためには、財源確保も重要な課題の一つと考えているため、今後、補助金の交付や都区財政調整での算定等について、区の事務量に応じた適切な財源配分を国や都に要望していきます。 ◆19番(あざみ民栄) 次に、高齢者福祉と介護保険について質問します。 第1の質問は、介護予防・日常生活支援総合事業--以下「総合事業」と言う--についてです。 第3回定例会で私たちが総合事業の報酬単価引き上げと精算方法簡素化等を求めたのに対し、区長は、有資格者による訪問介護相当サービスと生活支援員による生活援助サービスの差別化を図ると答弁されましたが、昨年来要望してきた有資格者による訪問介護相当サービスの単価引き上げについては回答がありませんでした。 国は2012年、2015年と2回連続して介護報酬を引き下げ、介護事業者の経営は厳しさを増しています。区が昨年実施した「高齢者の保健と福祉に関する調査」でも、訪問介護事業者の65.5%が経営状態が厳しいと答え、総合事業に取り組むために必要なことでは、81%が事業採算性の検証と答えています。 あるヘルパー事業者は、「高齢者総合相談センターに頼まれて仕方なく受けているけれども、処遇改善加算がなかったらやっていられない」と怒っています。 このままでは介護事業者がサービスを提供しなくなり、「差別化」しようにも、比べるべき一方のサービス提供者がいなくなるのではありませんか。改めて訪問介護相当サービスの報酬単価引き上げを求めます。明確に答弁願います。 ところで、総合事業では、高齢者総合相談センターの職員が要介護認定か、基本チェックリストにするかを判断します。基本チェックリストと判断すれば、基本チェックリストと聞き取りシートに質問内容を記載し、総合事業に該当していれば区役所に書類が上げられ、区が決裁する仕組みです。 ことし8月末現在の総合事業該当者で最も多い若松町高齢者総合相談センターが102人、逆に少ない箪笥町高齢者総合相談センターが9人です。要介護認定者に対する事業対象者の割合は、若松7%に対し、箪笥0.77%で、9倍の開きがあります。この差は、高齢者総合相談センターに相談した最初の時点で要介護認定か、基本チェックリストかの選択段階で生じると考えますが、区長はこの要因はどこにあると分析しているのかお答えください。 大阪市では、基本チェックリストだけだと医療的な視点が十分確保されないとして、主治医の意見書で、「認知症高齢者の日常生活自立度」と身体介護の必要性についての「障害高齢者の日常生活自立度」の2つの判断を行い、さらに市のサービス検討会議にかけて他職種の専門的視点から判定を行うスキームを構築しています。市の担当者は、「要支援者のケアプランを全部民間事業者にお願いしていることもあり、判断の基準を明確に示す必要があった」と言っています。 私たちはこの間、基本チェックリストはやめて、従前どおり全員介護認定を行うべきと主張してきました。再度そのことを求めますが、いかがですか。 そうしないなら、少なくとも高齢者総合相談センター窓口で応対した職員個人の判断に委ねる制度はやめ、医師の意見書や集団での検討会などを取り入れて判断基準を明確にし、誰が見ても客観的で公平だと思えるスキームに改善すべきです。区長の見解を伺います。 質問の第2は、介護基盤整備についてです。 第7期介護保険事業計画(素案)--以下「計画素案」と言う--では、富久町の国有地跡に予定されている以外に新たな特別養護老人ホーム増設計画がありません。計画素案では、「施設サービスは1人当たりの給付が高額」で「保険料に影響を与えることとなり、給付と負担のバランスを考慮する必要がある」特別養護老人ホームの「入居待機者の動向を踏まえ、在宅生活が困難になったときのセーフティネットとして機能する施設整備計画を進める」としています。 要するに、しばらく様子を見ておこうという姿勢です。高齢者も家族も在宅での生活を望んでいますが、それが困難だから施設入所を希望するのです。 私の知り合いは、特別養護老人ホームに入れないため、区外のサービスつき高齢者住宅や遠くの有料老人ホームに入所しています。有料老人ホーム、軽費老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅等の特定施設で介護サービスを受けている方は、昨年度末で1,380人もいて、特別養護老人ホーム入所者1,098人を282人も上回っています。 特定施設の介護保険サービスは、1日当たりの支給上限が介護度別に定められており、特別養護老人ホームなどの施設に比べて自己負担が多く発生しますし、補足給付もありません。施設サービス給付は高額だといって特別養護老人ホーム増設をセーブすれば、入れない人は有料老人ホームなどで自己負担せざるを得ないことになります。これでは保険あって介護なしです。意識的に特定施設の利用に誘導することが区の方針なのでしょうか。第7期中に特別養護老人ホームを増設する計画に変更するよう強く求めます。区長の見解を伺います。 質問の第3は、次期保険料についてです。 計画素案では、保険料の余剰金である介護給付準備基金が約15億円あり、保険料抑制に使うとしています。それ自体は当然ですが、問題は、なぜ15億円も保険料の余剰が出たかです。第6期の保険給付見込みは689億円で、第1号被保険者の3年間の負担分はその22%で、約152億円です。15億円の余剰とは、見込みより実際の給付が10%少なかったということです。保険料は3年に1度の見直しであり、第1号被保険者の年齢を考えれば、できるだけ見込みと給付に差が生じないようにすべきだと思いますが、この点についての区長の認識をお聞かせください。その上で、第6期で給付が想定より10%少なかった要因をどのように分析しているのかお答えください。 ところで、第6期で第1号被保険者が給付総額の22%を負担していたのが、第7期は23%に引き上げられました。1%は7億円強で、介護給付準備基金の残15億円の半分近くに当たります。15億で1人当たり幾ら下がり、1%で幾ら上がるのかお聞かせください。 新宿区は第6期の保険料を16段階に多段階化するなどして低所得者の負担を抑える努力をしてきましたが、そうした努力に水を差す国のやり方は許せません。国に対して第1号被保険者の負担割合を少なくとも、もとの22%に戻し、その分を国が負担するよう要望すべきと考えますが、いかがですか。 以上、答弁を求めます。 ◎区長(吉住健一) 高齢者福祉と介護保険についてのお尋ねです。 介護予防・日常生活支援総合事業における訪問介護相当サービスの報酬単価引き上げについてです。 有資格者である訪問介護員による訪問介護相当サービスは、現在、身体介護に要する時間に応じてサービス費の設定区分を3区分としています。このうち、食事や入浴介助などの身体介護に要する時間が最も短く、利用者負担も低い区分に利用が集中しています。 こうした利用者の偏りを解消するとともに、緩和した基準による生活援助サービスとの役割分担を明確化し、利用者のサービス選択制の確保と利便性の向上を図られるよう、サービス費の設定区分の変更を現在検討しています。 次に、基本チェックリストについてのお尋ねです。 御承知のとおり、基本チェックリストは、訪問型サービス及び通所型サービスのみ利用する場合に、要介護・要支援認定等を省略して迅速にサービスを利用できるようにするためのツールです。 一方、本人の心身状況等を聞き取りのみで把握するため、本人の主張と実態とが乖離し、過剰なサービス提供により本人の自立を阻害することも想定されます。そのため、高齢者総合相談センターで基本チェックリストを使用する際は、区独自の聞き取りシートも活用し、詳しい状況や支援が必要な原因や背景も必ず確認をしています。 また、区で独自に作成している「介護予防ケアマネジメントマニュアル」には、要介護・要支援認定を行うか、基本チェックリストを使用するかを適切に判断できるよう複数のパターンを示し、振り分け方法を明確化した表を掲載しています。 これに基づき、新規申請、継続申請のそれぞれの場面において事業の趣旨や目的を説明し、本人の希望するサービス内容や生活実態を十分に把握し、さまざまな社会資源等での対応が可能かどうかの見きわめも行った上で基本チェックリストを使用しています。 こうした状況の中で、高齢者総合相談センターによって使用割合が異なることはありますが、いずれも一人ひとりの状況に応じ対象者に寄り添った適切な対応の結果と考えます。 また、サービス利用開始に当たっては、本人及び家族、ケアマネジャー、サービス事業者3者によるサービス担当者会議を開催し、身体状況に関する情報や課題の把握を行い、よりよい支援に結びつけています。今後も高齢者総合相談センターと情報共有を図りつつ、基本チェックリストは十分な説明を行った上で使用してまいります。 次に、介護基盤整備についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、第7期介護保険事業計画(素案)での特別養護老人ホームの建設は、現在整備を進めている富久町国有地のみとなっておりますが、特別養護老人ホームの整備は、これまでと同様に重要な課題であると認識しています。事業運営に見合う広さの土地があった場合は積極的に活用に向けた検討を行っており、特定施設の利用に誘導する方針はありません。 建設に向けては、一定規模を有する土地が必要になりますが、当区では、国有地や都有地等の公有地の活用を前提に調査や検討を進めています。特別養護老人ホームの建設にふさわしい候補地が活用可能となった場合には、整備計画としてお示しします。 次に、次期保険料についてのお尋ねです。 介護保険は3カ年ごとに必要な給付費を見込み、それをもとに保険料を算定する制度であり、見込みと実際の給付費の差が少ないことが望ましいと考えています。 第6期計画での給付費が見込みより少なくなった要因としては、認知症高齢者グループホームと小規模多機能型居宅介護の各1所が未整備となったこと、2割負担導入や補足給付の改正、総合事業の開始など、各種の大きな制度改正があったことから、策定時点で与えられた条件での見込みと実績との差が生じたものであると考えています。こうしたことから、給付費全体では差異がある状況ですが、適切に見積もった結果の余剰金であると捉えています。 次に、第1号被保険者の負担割合と介護給付準備基金についてのお尋ねです。 現段階の試算では、22%から23%への変更による影響額は、介護保険料基準額月額で約300円程度です。また、介護給付準備基金を15億円投入した場合、約600円程度の抑制効果が見込まれます。 今回の負担率の改正は、政令に基づき第1号被保険者と第2号被保険者の構成比率により負担のバランスを見直すものであり、安定的な制度運営を図るために必要なものであるため、国に対し変更取り消しを要望する考えはありません。 また、国の負担割合については、法定負担分25%を確実に交付するとともに、各保険者間の高齢者数や所得状況による不均衡を是正するための財政措置は、これまでの調整交付金とは別枠で対応するよう、全国市長会や特別区長会を通じて要望しています。 ◆19番(あざみ民栄) 次に、国民健康保険について質問します。 第1に、国民健康保険料の負担についての認識です。 東京23区は、比較的低い保険料の自治体でしたが、給与年収400万円の4人世帯を例にとると、2017年度国民健康保険料は年41万8,000円、1999年度が年16万円だったことと比較すると、2.6倍となりました。とりわけ2017年度は、1人当たり平均で前年度比7,300円増、11万9,000円に値上げされ、過去10年間で最大の値上げとなりました。収入が200万円の65歳以上74歳未満の年金生活の御夫婦では、収入の17%にも達するほどです。こうした結果、人口100万人以上の都市の中で、保険料額は低いほうから2位だったのが高いほうから京都市に次ぐ2位へとはね上がりました。区長は、国民健康保険加入者の構成・世帯収入に対し、国民健康保険料負担の重さをどう受けとめておられるのか見解を伺います。 第2に、国と東京都の財政支援についてです。 2018年度からの国民健康保険の都道府県単位化にあたり、政府は3,400億円の交付金を与えますが、「国民健康保険料の負担感を緩和するには1兆円が必要」との全国知事会の要望に対し、全く不十分な金額です。東京都の財政支援の後退も深刻です。区市町村の国民健康保険に対する独自補助は1990年代、1人当たり8,000円から9,000円ありましたが、2015年度現在は1,700円しかありません。 一方、厚生労働省は、9月に2018年度からの都道府県単位化による急激な国民健康保険料の上昇を防ぐため、市区町村による法定外繰り入れを当面容認する姿勢を示しました。法定外繰り入れを「計画的に解消・削減すべき」という立場から、各地の試算で国民健康保険料の大幅上昇が示されたのを受け、激変緩和のため容認せざるを得なくなったのです。特別区長会が昨年12月26日、制度改正に当たり激変緩和と財政措置等を国に申し入れていますが、国民健康保険料の大幅な値上げが現実となりかねない今、国と東京都にさらに強く財政支援を求めるべきと考えますが、いかがですか。 第3に、新宿区の対応についてです。 今月21日、東京都国民健康保険運営協議会が行われました。同日諮問・答申された標準保険料率は府中市が最高で、約5万5,700円、1.6倍等であり、「これほどの値上げは聞いたことがない」「このまま市民に示せない」と自治体関係者に激震を与えています。 新宿区においても、2018年度仮係数に基づく1人当たり国民健康保険料額と2016年度法定外繰り入れ後の1人当たりの保険料との比較をすると、増減額はプラス4万536円、136.05%と大幅な値上げです。12月に行われる診療報酬改定によっては、さらなる値上げもあり得ます。この事態を区民はどこまで知っているでしょうか。国民健康保険運営協議会を開き、適時情報提供を行っている自治体もあります。介護保険は、説明会等で保険料を含めた次期計画案を提示し、区民に意見表明する機会を設けています。制度が変わり、国民健康保険料の大幅な値上げが予想されるもと、区民への情報提供はどうされるおつもりかお答えください。説明会などで直接意見を聞くとともに、区民意見を運営協議会で反映させるべきと考えますが、いかがでしょうか。 大阪府堺市は、2011年、市民生活に配慮し、一般会計からの法定外繰り入れにより国民健康保険料を引き下げ、その後も値上げしないよう法定外繰り入れを行っており、来年度以降もそれを維持するそうです。 東京都は2018年度、国民健康保険料値上げ抑制のための法定外繰り入れはしないとしていますが、東京都に法定外繰り入れを求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。 また、新宿区として来年度の新しい保険料率を盛り込んだ条例改正の提案に当たっては、法定外減免や区民1人当たり1万円の保険料引き下げを目指し、法定外繰り入れを行うべきと考えますが、いかがでしょうか。 第4に、特別調整交付金についてです。 国民健康保険の都道府県化に当たっては、「保険者機能の強化」が求められ、東京都は国民健康保険財政を「健全化するため」、全国に先駆けて国民健康保険料の「差し押さえ件数」、「差し押さえ割合」と保険証を取り上げて発行した資格証明書の数を区市町村に競わせ、特別調整交付金の大半に当たる40億円を与える制度を2014年に設けました。 被保険者数10万人以上の区市で差し押さえを100件行うと1,000万円、300件で2,000万円、500件で4,000万円を収納率向上の成績評価として交付金を与えるというものです。 このため、都内の自治体では国民健康保険料の滞納処分による差し押さえが急増する異常事態になっています。 新宿区では昨年度349件の差し押さえがあり、2,000万円の交付金となります。全国的に見ても、差し押さえ件数に対して交付金を出すのは4都県のみで、差し押さえ割合と資格証明書発行割合に対して交付するのは東京都しかありません。 都内では2014年度の国民健康保険料滞納世帯が60万7,224世帯、全加入世帯の25.7%であり、62自治体中60自治体が滞納処分・差し押さえを実行し、2万1,502件、76億3,403万円が差し押さえられました。 区は、差し押さえについて納付相談の機会をふやして生活支援を行うことが目的だと説明されていますが、私はむしろ、ここまで高くなってしまった国民健康保険料を区民が支払える金額に引き下げることこそが必要と考えます。東京都に対し、特別調整交付金を廃止し、その財源を国民健康保険財政の安定化と国民健康保険料引き下げに使えるよう求めるべきと考えますが、いかがでしょうか。 以上、答弁を求めます。 ◎区長(吉住健一) 国民健康保険についてのお尋ねです。 初めに、国民健康保険加入者の構成・世帯収入に対しての保険料負担についてです。 国民健康保険は、保険料と制度的に定められた公費を財源として事業運営を行うことが基本となっています。 また、国民健康保険の被保険者には低所得者が多いことから、所得や生活状況に応じて保険料の軽減や減免のほか、徴収の猶予を行うなど、適正かつ公平な負担となるよう配慮がなされています。 国民皆保険と質の高い医療水準が、相互の支え合いによって持続していくために、保険料の負担は必要なものであることを、被保険者の方々に御理解いただくことが大切であると考えています。 次に、国と東京都に対して、さらに強く財政支援を求めるべきとのお尋ねです。 国民健康保険の被保険者は高齢者が多く、1人当たりの医療費が高い一方、低所得者が多いため、保険料負担能力が低いという構造的課題を抱えています。 このような状況を踏まえ、保険料負担の緩和を図るため、これまでも特別区長会を通じ、国及び東京都に対して財政支援を求めてきましたが、今後も必要に応じて要望していきます。 次に、区民への情報提供と区民意見の運営協議会への反映についてです。 来年度の保険料については、東京都が算定・公表する標準保険料率を参考に、今後、区において案を検討し、決定することになります。決定に当たっては、国民健康保険運営協議会に諮問し、被保険者を初め、保険医、被用者保険及び公益の代表として区議会議員等さまざまな立場を代表する委員から意見を伺っていきます。したがって、説明会等を開催して意見を聴くことは考えていません。 被保険者を初め、区民の方々には国民健康保険運営協議会の資料や会議録をホームページ等で公表するほか、区報等で保険料に関する情報提供を行っていきます。 次に、東京都に対して保険料引き下げのための法定外繰り入れを求めるべきとのお尋ねです。 既に特別区長会を通じ、東京都に対して、安定的な財政運営ができるよう、国民健康保険制度改革における激変緩和措置及び低所得者等に対する保険料軽減策等の実施を要望しています。 このため、さらに東京都に対して保険料引き下げのための法定外繰り入れを行うよう要望することは考えておりません。 次に、法定外減免や法定外繰り入れを行うべきとのお尋ねです。 来年度の保険料率案の検討にあたっては、一般会計からの法定外繰入金の解消の方向性を踏まえながら、制度改正に伴って保険料負担の急激な変化が生じないよう配慮していきたいと考えています。 また、保険料の減免や軽減措置については現行の制度の中で対応するものと考えており、法定外の減免については、現在検討は行っていません。 次に、東京都の特別調整交付金を廃止し、その財源を国民健康保険財政安定化と保険料引き下げに使えるよう求めるべきとのお尋ねです。 都道府県の特別調整交付金は、保険者による国民健康保険事業の健全化に資する事業の実施状況や災害などの特別な事情等に着目して配分されるものです。 東京都の特別調整交付金のうち、差し押さえ件数を指標とした配分については、適正な保険料収入を確保するための事業の実施状況に応じて配分するもので、各保険者の徴収努力を促し、収入の確保に資するものと認識しています。 したがって、差し押さえ件数を指標とした特別調整交付金の配分の廃止や、財源を保険料の引き下げ等の目的に振りかえるよう求める考えはありません。 ◆19番(あざみ民栄) 次に、健康づくり行動計画について質問します。 「健康づくり行動計画」の素案が発表されました。基本方針と目標では、気軽に健康づくりに取り組める環境が整備され、区民が暮らしの中で意識せずとも健康づくりを実践でき、こころも身体も健康に暮らし続けられるまちを目指すことを掲げています。その実現のために、以下、具体的に質問します。 第1に、「健康を支える社会環境の整備」についてです。 質問の1つ目は、スポーツセンター、コズミックスポーツセンターの利用時間延長です。7月に行われたしんじゅく若者会議では、「区の施設を利用するにも、遅い時間では利用できない」「ボルダリングをしているが、子育て中のママが利用できる支援を」という意見が出されました。新宿区もスポーツセンターやコズミックは10時まで利用できますが、中野区の中野体育館は午後9時までだったのを午後11時45分まで延長し、さらに7・8月は午前9時の開始を午前7時に繰り上げ、多くの区民に喜ばれているそうです。この例も参考に、仕事帰りの区民など幅広く利用できるように利用時間延長を検討してはいかがでしょうか。 コズミックスポーツセンターのプールは、8月のみ朝8時から利用できますが、7月も含めた夏季に、2カ所のスポーツセンターで朝7時から利用できるようにしてはいかがでしょうか。それには、指定管理者との契約変更が必要となりますが、区が財政的支援を行って区民のニーズに応えるよう検討すべきと考えますが、いかがですか。 2つ目は、スポーツセンター、コズミックスポーツセンターでの託児の実施です。レガス新宿の行う一部の講座では託児がありますが、子育て中の保護者が利用できるよう場所を確保し、保育士等を配置して託児を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。 3つ目は、新宿区内には多数のスポーツジム、フィットネスクラブ等があり、早朝から深夜、24時間利用できるところもありますが、利用料が高いのが現実です。区立のスポーツ施設は偏在しており、不公平感は否めません。区民が身近な場所でスポーツを楽しめるよう、民間施設利用に対する補助を検討してはいかがでしょうか。 第2は、こころの健康づくりに関連した自殺対策についてです。 日本は自殺大国と言われ、自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は、183カ国中、下から18番目です。日本の自殺率は減少傾向で、昨年度全国で17.3人に対し、新宿区は22.1人と高く、20代の自殺率は全国27.2人に対し、新宿区は28.5人となっています。新宿区では、若者の自殺、特に女性が多いのが特徴です。 神奈川県座間市で起きた9人の若者の殺害・死体遺棄事件では、自殺願望のある若い女性にSNSを悪用して接近したと報道され、社会に衝撃を与えましたが、悩みを抱えたときに相談できる公的窓口の充実が必要だと感じました。区では、若者向けに6種類のパンフレットや3つのイベントを行い啓発してきましたが、さらなる対策の具体化について、以下4点伺います。 質問の1つ目は、「自殺対策計画」の策定です。 昨年4月、自殺対策基本法の改正により、地方自治体にも「自殺対策計画」の策定が義務づけられましたが、いつ、どのようなスケジュールで策定を進めるのでしょうか。計画には、特に若者対策を重視すべきと考えますが、いかがでしょうか。 2つ目は、相談窓口の周知とSNSの活用です。 東京都やNPO団体などが深夜、または24時間、こころの相談窓口を開設していますが、認知度が36.3%と低く、広く知らせる必要があります。SNSを使った窓口の紹介など、あらゆる機会を捉えて周知すべきではないでしょうか。また、悩みを気軽に打ち明けられるツールとしてSNSの活用は、鹿児島や長野県がLINEによるこころの相談を行い、鳥取県も検討しています。新宿区でもSNSを活用した相談を検討してはいかがでしょうか。 3つ目は、ゲートキーパーの養成とフォローです。 自殺の危険やサインに気づき適切に対応するゲートキーパーの養成講座の受講生は、10年間で2,417人となりました。健康づくり計画にゲートキーパーの養成目標を掲げ、同時に現在多くが受講したままになっていますが、講演会の案内や区の自殺対策の情報提供などを定期的に行い、フォローすべきではないでしょうか。 4つ目は、自殺未遂者、自死遺族への支援です。 堺市は、2009年に「自殺対策推進計画」を策定し、精神保健課いのちの応援係を6人体制でつくり、2015年から22の救急病院と警察・消防と自殺未遂者の対応で連携し、本人・家族の同意を得て訪問・支援を行っています。 また、精神保健センターが自死遺族を訪問して話を聞くなど、心のケアを行っています。区でも救急病院、警察、消防と連携して自殺未遂者、自死遺族への支援を検討してはいかがでしょうか。 以上、お答えください。 ◎区長(吉住健一) 健康づくり行動計画についてのお尋ねです。 初めに、スポーツセンター、コズミックスポーツセンターの利用時間延長についてです。 両施設ともに指定管理者により管理運営されていますが、区としては、施設を利用する方が安全かつ安心して利用できることが最も重要だと考えています。利用時間を延長するためには、人員の十分な配置、施設メンテナンスの問題等、さまざまな条件を整える必要がありますので、現在のところ、利用時間の延長は考えていません。 次に、7月を含む夏季に2つの施設のプールについて、朝7時から利用できるようにすべきとのお尋ねです。 御指摘のとおり、コズミックスポーツセンターでは、8月に限り、朝8時からプールの利用を可能にしていますが、施設全体の利用時間延長と同様、現在のところ、規模を拡大する考えはありません。 次に、スポーツセンター、コズミックスポーツセンターを子育て中の保護者が利用できるよう、託児の場所を確保し、保育士等の配置を検討すべきとのお尋ねです。 現在、スポーツセンターでは託児は実施していませんが、生後5カ月のお子さんから、親子一緒に楽しめる体操などのプログラムを実施しています。 また、コズミックスポーツセンターで実施している託児つきのプログラムでは、幼児体育室を託児専用の場所とし、保育士による託児を行っています。 託児場所を常設し、保育士等による託児を実施することは難しい状況ですが、利用者の方の御要望等も参考にしながら、より多くの子育て中の保護者の方の御利用につながるよう、プログラムの選定等に工夫をしてまいります。 次に、民間のスポーツ施設利用に対する補助についてのお尋ねです。 御指摘のとおり、区内には多くの民間スポーツ施設があります。現在のところ、民間施設利用に対する補助を実施する予定はありませんが、今後、スポーツ施設を利用しやすい環境づくりについて研究してまいります。 こころの健康づくりに関連した自殺対策についてのお尋ねです。 初めに、自殺対策計画の策定についてです。 区は、今後、国から提供される「自殺対策計画の手引き」や地域の実情に応じた「地域自殺対策政策パッケージ」等を参考に、平成30年度に検討を開始し、パブリック・コメントを経て平成31年度中に策定する予定です。 また、若者対策を重視した計画についてですが、検討に当たっては、若者の自殺者の現状を踏まえ、自殺予防に関して若者の支援を行っているNPO等の意見も聞きながら検討していきます。 次に、相談窓口の周知とSNSの活用についてです。 区は現在、こころの相談窓口を案内する手段として、区ホームページへの掲載のほか、チラシ、ポケットティッシュの配布を行っています。 また、困りごと・悩みごと相談窓口一覧、若者向けの相談窓口リーフレット等を特別出張所や図書館、漫画喫茶等に配布し、周知を行っています。配布物には、QRコードを載せ、さらに詳しい情報が得られるよう工夫をしています。 区としては、若者が気軽にアクセスできる手段としてSNSやLINE等が有効であることは認識しており、今後、区のフェイスブックやツイッターを活用した相談窓口の周知について検討してまいります。 また、相談は、本人と直接電話や面接により、きめ細やかに対応していく必要があるため、SNSを活用した相談については考えておりません。 次に、ゲートキーパーの養成とフォローについてです。 区は、一人でも多くの区民や区の職員が、自殺予防に関する正しい知識を得て、悩みを抱えた人を相談窓口につなげていくことを主な目的として、養成講座を実施しているところです。 養成したゲートキーパーへの情報提供等のフォローも必要と考えておりますが、現時点では、ゲートキーパーをふやしていくことを優先課題として取り組んでいます。 次に、自殺未遂者、自死遺族への支援についてです。 区は、学識経験者、医療・福祉の関係機関、警察・消防、NPO等の委員で構成した「自殺総合対策会議」を設置し、自殺未遂者や自死遺族支援についても検討しており、関係機関相互のネットワークの構築を図っています。 また、自殺未遂者支援に取り組んでいる区内の大学病院と情報交換等も行っており、引き続き支援方法等について検討してまいります。 ◆19番(あざみ民栄) 次に、教育ビジョンについて質問します。 教育ビジョンは、11月27日まで素案に対するパブリック・コメントが行われ、来年2月の教育委員会で決定される予定です。この間行われた地域説明会の参加者は何人で、それ以外の説明会をどのように行い、何人参加したのでしょうか。パブリック・コメントは何人から何件あったかお答えください。また、現場の教員の意見を聞く機会をどのように設け、どのような意見があったのかお答えください。 教育ビジョンは、決定までに2カ月以上あります。あらゆる機会を捉えて意見を聴き、取り入れるべきと考えますが、いかがでしょうか。 教育ビジョンが初めて策定された前回と比べて、子どもと学校を取り巻く環境は厳しさを増し、子どもの貧困、教員の多忙などが社会問題となっています。素案には、そうした課題が盛り込まれた点を大いに評価し、さらに充実するため、2点に絞って提案します。 第1は、「教員の多忙」解消です。 新宿区教育委員会がことし6・7月に行った「教員の勤務実態調査」に続き、同時期に東京都が行った調査も結果が発表され、いずれも文部科学省の昨年の調査を上回る長時間労働の実態が明らかになりました。東京都教育委員会は、公立中学校教員の7割、小学校や高校も3割が過労死ラインを超える在校時間となっている現状から、過労死ライン超えゼロを目標に、来年2月までに働き方改革の計画を策定する予定です。 「平成29年度新宿区教育委員会の権限に属する事務の管理及び執行の状況の点検及び評価(平成28年度分)報告書」で、評価委員の3人中2人が教員の多忙化について指摘し、「教育委員会からのアンケートや調査等に対応することも教員にとっては大変である」「新学習指導要領の実施と、それに伴う教員の多忙化が今後の課題」などと総括しました。 新宿区教育委員会は、プロジェクトチーム設置のための準備会を立ち上げましたが、参考になるのは、ことし3月に出された全国都道府県教育長協議会第4部会の研究報告と、愛知県教育委員会の「教員の多忙化解消プラン」です。 研究報告と愛知プランは共通点が多く見られますが、愛知プランは、より踏み込んで、2019年度までに過労死ライン超えの教員の割合を全校種ゼロにしつつ、新たな目標を2017年度中に設定するとし、具体策では、出退勤管理の電子化、解錠時間・施錠時間の設定や閉校日の設定。業務改善については、「教員の本来的業務」を精査するための洗い出しを行い、教育委員会が実施する会議、調査、研修、研究指定校の廃止などゼロベースで見直すという大胆なものです。 国に対する要望も課題ごとに具体的です。教員は、制度上残業代がなく、昭和41年当時の勤務実態をもとにした教職調整額で対応されていますが、実態に見合った制度となるよう要請することや、教職員定数の改善について35人学級編制の法制度化による少人数学級の推進などを要請していくことが明確にされています。 愛知プランのように、時間外在校時間について過労死ライン超えゼロはもちろん、年度ごとの数値目標を教育ビジョンに明記すべきではないでしょうか。 具体策では、ICTを活用した出退勤管理です。校長・副校長が教員の勤務実態を客観的に把握できれば、適切な声かけもできます。会議、調査、研修、研究指定校の見直しも不可欠です。少なくとも時間外にかかる会議は禁止し、会議や研修も情報伝達的なものは1カ所に集めて行う必要はなく、ネット会議などICTを活用すれば、往復の出張時間と経費が削減できます。研究指定校も教員が準備に追われ、本末転倒なことになっていないでしょうか。愛知のようにゼロベースでの見直しが必要です。定時退庁日やお盆休みなど完全休業日の設定、一定時間以降の留守番電話への切りかえなどを実施し、保護者・地域への啓発を行うことも必要です。これらを来年度から実施すべく検討してはいかがでしょうか。 根本的な解決のためには、国の制度を変えていくことが不可欠ですが、素案の表現では不十分です。教職調整額の時間外勤務手当への変更も含めた抜本的な見直し、全学年少人数学級の実施等を国や都に求めることを明確にすべきではないでしょうか。 第2に、主権者教育の位置づけを高めることです。 地域説明会で、「素案では主権者教育の内容が少ない。自治基本条例の教材が学校現場で使われていないのではないか。子どもたちが身近なことから考えることが大事だ」という指摘がありました。 この間、新宿区自治基本条例が制定され、昨年の参議院選挙から18歳選挙権が施行されました。学校現場でさまざまな取り組みがされていることは承知していますが、新たな教育ビジョン個別事業の「主権者教育等の推進」に自治基本条例を活かした主権者教育を位置づけるべきではないでしょうか。 神奈川県教育委員会は、県立高校でシチズンシップ教育の一環として取り組んできた「政治参加教育」を発展させ、18歳選挙権施行に伴い、「小・中学校における政治的教養を育む教育指導資料」をことし3月作成し、例えば中学2年生では、身近な地域の防災について、行政の資料や地域の人の意見とともに、地方議会がどのような対策をとろうとしているか調べる例や、中学校3年生は「国民の生活と政府の役割」をテーマに職業体験などの学習を振り返り、働く意味を考えると同時に、労働者を守る法制度や労働組合についても学ぶといった例が示されています。 新宿区でも、このような資料を作成し、選挙管理委員会や行政機関、弁護士など、外部講師のメニューもあわせて提供することで「主権者教育」の取り組みをサポートすることが必要と考えますが、いかがでしょうか。 以上、お答えください。 ◎教育長(酒井敏男) 教育ビジョンについてのお尋ねです。 初めに、教育ビジョン素案に対するパブリック・コメントなどの実施状況についてです。 教育委員会では、10月に決定した素案に対し、区民等からの意見を聞く機会としてパブリック・コメント等を実施してまいりました。 区内10カ所の地域センターで開催した地域説明会では、計96名の参加があり、また小学校と中学校のPTA会長向け説明会では20名の参加がありました。そのほかに、幼稚園PTA連合会会長会・副会長会、スクール・コーディネーター連絡会定例会、地区青少年育成委員会会長会では素案を説明し、意見を聴く機会を設けてまいりました。 なお、パブリック・コメントでは、16名1団体の方から計117件の意見をいただきました。 さらに、現場の教員の意見を聴く機会としては、教育ビジョン策定に当たり、校園長会や副校園長会だけでなく、教務主任会、生活指導主任会にも意見書の提出を求め、学校現場が捉える子どもの現状と課題や家庭・地域との連携・協働による学校づくりに向け学校現場でできることなど、多くの意見をいただいています。 今後は、こうした機会でいただいた意見を踏まえ、必要な修正・見直しを行った上で、来年2月の教育委員会定例会で教育ビジョンを策定してまいります。 次に、「教員の多忙」解消についてのお尋ねです。 教育委員会では、時間外在校時間が過労死ラインを超えるなど、長時間労働が常態化することは望ましいことではないと受けとめています。 今後、教育委員会の事務局職員と学校の代表で構成するプロジェクトチームを設置し、過労死ラインを超える状況の解消や年度ごとの数値目標などのあり方も含め検討していきたいと考えております。 教員の業務改善などについては、教育委員会としても重要な課題と認識しています。 教育ビジョンは、教育目標を達成するために、今後10年間を計画期間として新宿区の目指す教育と、その実現のための施策や事業を総合的に、かつ、体系的に明らかにするもので、明記する内容には限りがありますが、引き続き重要な課題と認識し、取り組んでまいります。 次に、「教員の多忙」解消の具体策についてです。 先ほど述べたプロジェクトチームは、「勤務環境の改善に向けた具体的な取り組み」、「教員の意識改革」、「取り組みの実効性を担保する仕組みづくり」といった視点から検討を進めていくことを考えています。 御指摘の「教員の多忙」解消の具体策としての会議のあり方や定時退庁日、完全休業日の設定、留守番電話の活用、保護者・地域への啓発などについても、さまざまな視点から検討することになると思われます。今後対応していく具体的な内容を今年度中に取りまとめ、対応可能なものから順次実施に移し、教員の業務改善に取り組んでまいります。 なお、研究指定校については、教育委員会とともに研究を進めるもので、効率的な運営に努めており、計画段階から教員が主体的にかかわることを大切にし、計画的に進めています。指定校のサイクルについても校長会と協議して、見直しをしています。また、研修においては、参加者が主体的に参加する形態を推進しており、相手と直接協議したり議論することを大切にしています。 次に、教職調整額の時間外勤務手当への変更も含めた抜本的な見直しについてです。 教職調整額は、教員について、その職務と勤務態様の特殊性に基づき、時間外勤務手当のかわりとして法律で定められたものです。教職調整額が教員の勤務実態に見合ったものであるかという議論があることは認識しておりますが、国の動向を注視してまいります。 次に、教員の負担軽減の一環として、全学年での少人数学級の実施等を働きかけるべきではないかについてです。 現在、区立学校の小学校1年生は原則35人で1学級を編制しており、小学校2年生と中学校1年生についても、都の学級編制基準に基づき、可能な限り35人編制を行っています。 少人数学級の推進については、児童・生徒に質の高い教育を提供する上で有効なものと考えていることから、引き続き国や都に働きかけを行ってまいります。 次に、新たな教育ビジョンの「主権者教育等の推進」に自治基本条例を活かした主権者教育を位置づけることについてのお尋ねです。 公職選挙法の改正により選挙年齢が引き下げられ、中学生にとって選挙が身近なものになったことから、新たな教育ビジョンでは個別事業として「主権者教育等の推進」を掲げています。 現在、学校では選挙管理委員会の方を招いて、外部講師による出前授業の取り組みを行っています。中学校の生徒会役員選挙では、選挙管理委員会の協力を得て、実際の投票箱や投票記載台を使用した投票を行っています。こうした体験とも関連づけ、自治基本条例パンフレットを活用し、第3学年社会科公民的分野で地方自治の仕組みについて学習を進めています。 御指摘については、パブリック・コメントでいただいた他の意見とあわせて検討いたします。 次に、新宿区でも資料を作成するなどして主権者教育の取り組みをサポートすることについてです。 中学校社会科副読本「のびゆく新宿」では、地方自治や区政の働きについて、自分たちが住む地域の事象を通して具体的に調べることができるよう、新宿区の区政の資料を掲載しています。 また、区内小・中学校に「自治基本条例パンフレット」を配布する際には、教科と学習単元を具体的に示し、学習指導要領との関連を図りながら積極的に活用するよう周知しています。 今後は、新学習指導要領改訂に合わせた社会科副読本の改訂を行うとともに、各学校における外部講師の活用状況についての情報を共有するなど、各学校の取り組みを支援してまいります。 以上で答弁を終わります。 ◆19番(あざみ民栄) ただいま区長と教育委員会から御答弁をいただきました。ありがとうございました。 一部には前向きな答弁もあったような気がいたしますが、全体としてはもう一度議論したいなというものが多くあったと思います。 たくさんできないので1点、ここには直接の答弁はなかったのかなというふうに思うところがありまして、最初の総合計画等のところの学童クラブなんですけれども、私は多くの保護者が望んでいる学童クラブそのものをふやしてほしいという願いはどう受けとめていらっしゃるのかという質問をしたんですけれども、保護者アンケートなどはどちらも高い。「どちらも」というのは、「ひろばプラス」も学童も高い評価だということだったり、あとは定員オーバー状態が大きいところについてはスペースの拡大をしていくという、これまでどおりの答弁しかなかったなと。私はそのものを、学童クラブそのものをふやしてほしいという願いがあるというふうに思っていますので、それについてはどう受けとめていらっしゃるのかというのをもう一度お聞きしたいと思います。 ◎子ども家庭部長(橋本隆) 学童クラブの増設要望についてのお尋ねでございますが、確かに実行計画の素案のほうでいただいたパブリック・コメントの中には、議員から御指摘がございましたとおり、学童クラブの増設についての御意見をいただいているところでございます。 そちらのほうにつきましては、私どもといたしましては、先ほど区長も御答弁をさせていただきましたが、子どもの居場所づくりというところで「放課後子どもひろば」「ひろばプラス」事業、そして学童クラブ、あるいは児童館等多様な選択肢を用意して、保護者の方がお子様のいろいろな成長段階、あるいは家庭環境に応じて多様な選択をできるという選択肢を広げてまいる。そういうところで学童クラブの充実を図っていきたいというふうに考えております。 ◆19番(あざみ民栄) 今の答弁は、まさに本当にすりかえというふうに私は思わざるを得ないんです。 質問でも言いましたけれども、法律に基づいて保育に欠ける子どもを、児童を預かる施設として位置づけがされた学童クラブそのものを増設、定員拡大をと望んでいることに対して、「放課後子どもひろば」ですとか児童館というのは違うんです。それを一緒くたにして、そういう多様な選択肢を提供することが学童クラブの増設を望む人たちへの応えというのは全く間違っているというふうに改めて思いますので、そこは本当に--まあ、私は区長にその願いの受けとめを聞きたかったんですけれども、本当にまた別な機会を捉えて、この問題、議論をさせていただきたいと思います。 以上で代表質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手) ○議長(佐原たけし) 本日の代表質問は終了しました。--------------------------------------- ○議長(佐原たけし) 以上で本日の日程は終わりました。 次の会議は11月30日午前10時に開きます。ここに御出席の皆様には改めて通知しませんので、御了承願います。 本日はこれで散会します。 △散会 午後4時33分                  議長    佐原たけし                  議員    あざみ民栄                  議員    阿部早苗...